【長野県諏訪市観光活性化座談会】諏訪市長×諏訪観光協会会長×諏訪商工会議所会頭

  • 2022年3月9日

ワーケーションで関係人口、観光消費増

 長野県の中央、諏訪湖を臨む諏訪市。新宿から特急列車を利用すれば2時間ほどで来られる。上諏訪温泉、霧ヶ峰高原、諏訪大社など観光資源は数多く、アクティビティも充実。コロナ禍で観光を取り巻く環境は厳しいが、先を見据え「ワーケーション」に活路を見いだす。諏訪観光をリードする金子ゆかり市長、佐久秀幸諏訪観光協会会長、岩波寿亮諏訪商工会議所会頭にお集まりいただき、現状と課題を語っていただいた。司会は論説委員の内井高弘。(市庁舎で)

 

 ――市政における観光の位置付けは。また、諏訪の観光にとって魅力は何でしょう。

 金子 法人市民税の納入実績では、製造業関連の納税事業者が占める割合が高く、売上高は商業・サービス業が大きいですが、市政を考える上で観光は欠かせません。

 諏訪湖の花火、御柱祭、霧ヶ峰高原、諏訪湖マラソン、そして豊富な湯量と泉質のいい温泉…。観光資源に恵まれ、バリエーションに富んでいます。ただ、それを生かし切れていないのが実情です。

諏訪市長 金子ゆかり氏

 

 ――市長2期目の公約として「観光グランドデザイン」策定を掲げていますね。

 金子 基本理念を「SUWAらしいがあふれる観光地~自然・伝統文化・人が根付く、オンリーワンの場所へ」とし、地域資源の活用や郷土愛とおもてなしの磨き上げなど四つのビジョンを掲げました。市民から広く意見を聴き、3月をめどに発表します。

 当地は日帰り客が多く、通過型の観光地になっています。例えば8月に実施する花火大会は全国屈指の規模ですが、このシーズンは宿泊客が多く、冬期には減少します。オンとオフの差があり、年間を通じて魅力を発信し、この差をなくすことが課題の一つです。グランドデザインでその方向性を示せればと思います。

 佐久 観光は誰でも語ることができますが、実行に移すことは非常に難しいのが現実です。だからこそやりがいがあります。

 諏訪は新宿から特急に乗れば2時間ほどで来られ、交通アクセスも良い。湖あり、高原あり、温泉ありと何でもそろっています。イベントも数多く、グリーン期を中心に宿泊するお客さまでにぎわいましたが、コロナ禍、団体客の減少や旅行形態の変化で状況が一変しました。現在、市が策定するグランドデザインに期待し、観光協会としても全面的に協力してまいります。

諏訪観光協会会長 佐久秀幸氏

 

 ――新型コロナウイルスで観光業は苦戦しています。諏訪も同じ状況ですか。

 佐久 昨年秋以降収束の兆しが見え始め、観光客も戻りつつありましたが、オミクロン株の猛威でまた元に戻りました。休業する旅館・ホテル、飲み屋街も暗く、人があまり出ていません。影響は甚大です。

 岩波 商工会議所の立場から言わせてもらいますと、観光業と共に、もう一つの基幹産業はモノづくりです。カメラや時計などの製造から、今は超精密・微細加工の集積地となっており、技術の高い中小企業が集まっています。

 「世界のSUWAブランド」を目指し地域一体となって取り組んでいますが、その一つに「諏訪圏工業メッセ」があります。2002年から開催され、現在では諏訪地域を中心に金属、電機、光学などの機械装置や加工部品に関わる400社以上の企業・団体が出展します。関係者からは、国内最大級の工業専門展示会として高い評価をいただいています。

諏訪商工会議所会頭 岩波寿亮氏

 

 ――いつごろ開いているのですか。

 岩波 毎年10月に3日間開催しますが、海外を含め3万人ほどが来場します。この時は旅館・ホテルや飲み屋街もにぎわいます。観光への波及効果も決して小さくはないと自負しています。コロナ禍でリアルでの開催はできませんが、終息し、早く再開できることを願っています。

 

 ――コロナ禍は働き方にも影響を与え、リゾート地で仕事に取り組み、休暇も楽しむ「ワーケーション」に注目が集まりました。市もワーケーション推進に熱心ですね。

 金子 諏訪はモノづくり、観光のまちであり、ワーケーションに適した土地柄です。20年度からワーケーションへの取り組みを本格的に始め、「信州リゾートテレワーク」のモデル地域の指定を受け、有識者による講演会や地元関係者を対象とした勉強会を開いてきました。

 市も加入しているワーケーション自治体協議会(WAJ)、経団連、日本観光振興協会が連携して行ったモニターツアーの実施場所に選定され、外部有識者に市でのワーケーションを体験してもらい、客観的な視点による評価も得られました。

 この流れは21年度のモニターツアーの企画運営につながり、対象として首都圏企業とのマッチングの機会を求めたことで、ITベンダー企業のイメージ情報システム株式会社(東京都、齋藤元秀社長)とのご縁に結びつきました。

 

 ――イメージ情報システム株式会社の社員が実際に諏訪に滞在した?

 金子 モデル事業として昨年秋から冬にかけ、5泊6日の日程で計3回行い、延べ15人が滞在されました。市駅前交流施設「すわっチャオ」でのテレワークや諏訪湖でのアクティビティなど、多面的な体験だけでなく、地元企業とも交流会を開くなど、新たな諏訪の可能性についても精力的に活動していただきました。

 佐久 観光協会では市との連携により、20年度からワーケーションに関わっています。受け入れ環境を整えようと、まず協会会員での勉強会からスタートしました。山梨大の田中敦教授の講演を通じて知見を深め、また旅行会社を招き、諏訪での体験素材について磨き上げを行いました。

 21年度は市が採択を受けた観光庁の「新たな旅のスタイル」促進事業や市独自の「SUWAーケーション事業」により、モニターツアーが実施されました。参加者との意見交換を通じて、受け入れ環境整備の課題が見える化できました。

 岩波 ワーケーションが人の交流、地域内連携のきっかけになればと期待しています。21年度は観光庁の「域内連携促進事業」に取り組みました。

 ビジネスユース、特に諏訪圏工業メッセ展示会の来場者をターゲットに、最先端のモノづくり事業者とも交流していただこうと準備しましたが、残念ながらコロナ禍で中止に。代わってオンラインプログラムとして実施しましたが、ビジネスマッチングなどは一定の成果がありました。

 

 ――ワーケーションについては自治体の関心も高く、誘致合戦も熱を帯びそうです。関係者一体となった取り組みが欠かせません。

 佐久 観光協会の役割はお客さまと地域の企業・団体とのハブ機能を果たすことだと考えています。企業間のマッチングについては市の産業連携推進室、商工会議所との連携が必要です。そのため、観光協会は3月上旬に諏訪商工会館に移転し、これまで以上に連携強化を図ります。

 また、受け入れを行う旅館・ホテルもワーケーションに対応できるよう設備を整えなければなりません。Wi―Fiはもちろん、仕事をするスペース確保など、協力を呼び掛けてまいります。ワーケーションの取り組みがこれからの諏訪の観光にとって必要不可欠です。

 

 ――課題を挙げるとすれば。

 佐久 観光地として成熟していますが、数多くの観光資源を商品化し、販売を行うという観光消費に結び付いていないのが現状です。そのような中で、今回ワークプレイスとして寺院や美術館を活用することで、観光消費につながる動きが始まりました。

 また、モニターツアーを通じて企業側の課題が見える化でき、次年度に向けての対策を検討することができました。市や商工会議所と連携し、顕在化した課題解決に向けて取り組みます。

 

 ――コロナ禍が終息すればワーケーションへの関心が薄れ、元の働き方に戻るのでは、という見方もありますが。

 金子 職場に来なくても仕事ができることが分かり、フロアを縮小するなど経費削減ができたという声や、柔軟な働き方に取り組んでいる企業としてもアピールできるという声も聞きます。従業員にとっては休暇が取りやすくなり、家族サービスと仕事も両立できるメリットもあります。

 ワーケーションに向き不向きの企業はあり、時間・リスク管理や費用の問題などクリアすべき課題があることも事実ですが、地域にとっては関係人口が増加し、旅館・ホテルでは平日やオフシーズンの稼働率向上にもつながります。ワーケーションはビジネスチャンスになり得ると思います。

 岩波 普及によって諏訪に長期滞在しやすくなるため、定住者でも観光客でもない関係人口を増やすことができます。空き家や空きオフィスの問題解決も期待できる。ビジネスマッチングの機会も増えるでしょう。ワーケーションといえば諏訪、と企業から選ばれる地域になるよう、市、観光協会、商工会議所が力を合わせて取り組んでいきます。

 金子 ワーケーションは地域活性化の一つの道具。コロナ禍で注目が集まっていますが、観光客の減少を埋めるための切り札ではありません。何のためにワーケーションをやるのかという目的をしっかりと持つ。モノづくりのまちであることを生かし、モノづくり産業活性化のためにワーケーションに取り組むというのも差別化の武器になるのではないでしょうか。

 佐久 観光協会として今後、(1)平日の宿泊拡大(2)滞在中の観光消費額の拡大(3)地域での企業連携(諏訪でのモノづくり企業との連携)の創出―に取り組みたいと考えています。また、本年も「にっぽんの温泉100選」にランクインすることができました。この点も今後の取り組みに生かしてまいります。

 6月には初めてのトライアスロン大会が開催されます。諏訪のスポーツツーリズムの大きな一歩になると期待しています。

 

 ――岩波会頭が実行委員長で、金子市長は大会長とのことですが。

 岩波 正式には「スワコエイトピークスミドルトライアスロン大会」といい、諏訪6市町村を貫く初めてのイベントで、6月25日に開催する予定です。千人ほどの参加を見込んでいます。

 金子 昨年6月に開催を計画していましたがコロナ禍で延期しました。諏訪6市町村を包み込む観光エリアとしての「諏訪の国」の魅力を発信する大きな柱になります。諏訪湖の浄化と八ヶ岳の自然保護活動の深化が目的で、開催日は御柱祭の日程や諏訪湖の水温などを考慮して設定しました。20回、30回と続けていく方針です。

 

 ――諏訪地域の観光振興、経済活性化にワーケーションは大きな役割を果たしそうですね。

 佐久 諏訪はワーケーションに適した土地柄です。今後、受け入れ環境の磨き上げを行うことで候補地になると確信しています。

 岩波 諏訪には地方都市には珍しく、ジェトロ(日本貿易振興機構)の出張所や商工中金諏訪支店、そして税関があります。モノづくりに恵まれた地域であり、観光するのもいい。ワーケーションにはうってつけです。

 金子 諏訪は進取の精神が息づいています。コロナで働き方を含めて変革が求められている中、ここは新しいものを取り入れ、生き延びていくパワーの遺伝子を持っています。ワーケーションという新しい働き方を実践するにはふさわしい土地柄であり、これを糧に一層の活性化を図っていきます。

 

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