Phoxterは9月20日、ANA最大規模の貨物上屋「成田空港第8貨物ビル」に60台のAGVを提供したと発表した。
株式会社Phoxter(本社:大阪府豊中市、代表取締役:園田淳一、以下「Phoxter」)は、全日本空輸株式会社(東京都港区、代表取締役社長:井上 慎一、以下「ANA」)が2024年10月に供用開始予定の成田空港第8貨物ビルに、60台のAGV(自動搬送車)を提供します。
Phoxterは、これまでに日本国内で2,000台以上のAGVを導入し、物流業や製造業におけるピッキング、保管、搬送、取出しなどの自動化を大きく推進してきました。今回のANAとの取り組みにより、Phoxterの省人化・効率化ソリューションが、航空物流という新たな領域にも有効活用できることが確認され、航空物流における変革が一層進むことが期待されます。Phoxterは、今後も引き続きソリューションの幅を広げ、お客様の省人化・効率化ニーズに応えてまいります。
今回の取り組みの背景
ANAは2024年10月、成田空港貨物ターミナル地区に、同社最大規模となる貨物上屋(延べ面積約6.1万㎡、うち上屋面積約3.8万㎡)の供用開始を予定しています。ANAは、省人省力化や作業安全性向上の実現に向けて2019年から調査研究を行い、実現策の1つとして従来のフォークリフトによる固定ロケーションシステム(*1)の運用ではなく、AGVを活用したロケーションシステムの導入の検討を進めました。その中で、複数社のベンダーに対して提案依頼を行い、価格、納期、拡張性等の観点からPhoxterの提案が採用されました。
*1:固定ロケーションシステムとは、商品を仕向け地ごとにあらかじめ決められた特定の場所に常に配置する方法。
ANAのプレスリリース:https://www.anahd.co.jp/group/pr/202309/20230920.html
PhoxterとANAの協業内容
従前のフリーロケーションシステム(*2)の課題として、全体を一つの大きなロケーションとして管理する場合、AGVは入荷スキッド(*3)を自由に空きロケーションに格納しますが、出荷時には分散したスキッドを集荷する作業動線が長くなるため、多数のAGVが必要となる問題がありました。そこで、ANAとPhoxterは繰り返しシミュレーションを重ね、最適化された特定の条件でゾーンニングした位置に保管することとしました。その結果、AGV個々の作業動線が短くなり、AGVの総数を抑制することができました。また、渋滞による作業遅延等の影響も低減させることが可能となりました。
ANAとPhoxterは、今後も継続的に運用改善の検討を進めていきます。
*2:フリーロケーションシステムとは、商品を特定の決まった場所に置くのではなく、空いているスペースに配置する方法。
*3:スキッドとは、荷物の搬送や保管に用いられる荷役台のこと。
AGV導入により期待される効果
今回ANAは、成田空港第8貨物ビルにAGVを導入することにより、主に以下の効果を期待しています。
1.省人省力化
日本国内の多くの現場と同様、航空物流においても人員確保が恒常的な課題となっています。AGVを活用することで省人省力化を実現し、安定的なオペレーションにつながります。
2.安全性の向上
貨物上屋では、限られたスペース内に多のフォークリフトが走行しています。フォークリフトの作業をAGVが代替することで、フォークリフトの作業動線の短縮や、特定のエリアに限定させることができ、現場作業員の安全性が向上するとともに、取扱貨物に接触するリスクも低減できます。
3.貨物取扱量の変動に応じた柔軟な対応
航空貨物は、今後も継続的に拡大することが見込まれています。今後、貨物上屋を拡張する必要性が生じた場合でも、AGVが稼働する区域を広げることで、柔軟に対応することができます。
4.面積保管効率の向上
固定ロケーションではなくゾーンニングによるロケーションシステムでの管理により余剰スペースを削減でき、加えてフォークリフトからAGVへの代替によりフォークリフトの作業動線として確保する必要があった通路スペースを削減でき、同一面積内での保管能力を最大化できます。
Phoxterの今後の展開
環境負荷軽減のためのモーダルシフト(*4)や、輸送・保管効率改善のためのフィジカルインターネット (*5)が進展する中で、トラック、船、飛行機、倉庫など、異なる輸送手段間で効率的に移動できるようなシステムが必要とされています。一方で、モーダルシフトが進まない理由の1つとして、異なる輸送手段に積み替える際にリードタイムが長くなる点が挙げられます。パレットやロールボックス、コンテナなどの標準化が進んだとしても、集荷した荷物を必要なタイミングで必要数取り出す仕組みを実現するためには、倉庫内の在庫数管理(WMS情報)、配送車両情報(TMS)、オーダー情報(OMS)がこれまで以上に動的に連携し最適化される必要があり、高速な通信網を使ったデータ連携が肝要となるとPhoxterは考えています。
Phoxterでは、今回のANAとの取り組みに加え、大阪府茨木市に開設したR&Dセンターで東急不動産とローカル5Gを使った次世代物流システムの開発を進めるなど、複数の輸送手段や施設を自由に利活用し、突発的な需要変動にも柔軟に対応できるようなシステムの構築を目指していきます。
*4:モーダルシフトとは、貨物輸送をトラックから環境負荷の小さい鉄道・船舶等に転換し、環境負荷の軽減や効率向上を目指すこと。
*5:フィジカルインターネットとは、トラック、貨物列車、船、航空機などの輸送スペースと、倉庫が持つ保管・仕分スペースをシェアすることにより、物流リソースの稼働率を向上させる仕組みのこと。