前回コラムでは、宿泊税をめぐって宿から寄せられた声が、制度の設計や使い道に生かされている例を述べた。今回コラムでは、どの宿でも頭の痛い人材の確保を取り上げたい。この分野は、近隣の宿やDMOと組んだ方が国の補助を受けやすい。
2026年春に公募された宿泊業向けの省力化投資補助は、1施設当たり上限1千万円、補助率2分の1という条件に加え、DMOや自治体と連携した地域一体の求人活動などに取り組んでいること、少なくともその予定があることを申請の要件にしていた。自動チェックイン機のような自館の設備投資に対する補助でさえ、地域との連携が問われたのである。
同じ年には、複数の宿が共同で使う設備の導入や改修を補助率2分の1、上限5千万円で支援する事業も複数回公募された。国の資料では、その例としてセントラルキッチンや温泉の引湯管と合わせて従業員寮が挙げられている。1軒では負担の大きい投資を、地域で組めば後押しするという考え方である。
採用はこれまで、各館がそれぞれに努力するものだった。しかし、求職者から見れば、選ぶのは1軒の宿というより、その土地で働いて暮らすことである。地域ぐるみで働く場としての魅力を高めれば、自館の採用活動も進めやすくなる。
DMOは宿と行政、学校をつなぐ立場にある。DMO登録ガイドラインは2025年3月の改正で、DMOが把握する指標に観光事業者の平均給与額を加えた。2026年7月の改正で必須の指標は四つに絞られたが、観光関連産業で働く人への裨益(ひえき)という観点は残り、その指標の例に平均給与額が挙げられている。DMOも宿の給与や採用の実情を把握し、地域の働き手に目を向けた施策に取り組むべきだという国の方針の表れと読める。宿が実情を伝えることは、その施策の材料を提供することでもある。
宿の側でできることも多い。近隣の宿と、繁忙期や不足する職種、採用条件を持ち寄れば、共通の課題はおのずと見えてくる。そこから地域合同の求人サイトや就職説明会、学生の職場体験をDMOと企画すればよい。数軒で開く合同説明会なら費用を分担できるため1軒の負担は軽く、効果は次の採用期に確かめられる。寮の空き部屋の貸し借りや、繁忙期の違う宿の間での人材の融通も、明日からでも試せる。
合同で取り組んだ内容は、参加館、実施日、参加者数を記録に残しておきたい。同種の補助が次に公募されたとき、地域連携の実績として申請書に書けるからである。共同の従業員寮のような大きな投資も、実績を積んだ宿の集まりであれば、補助を使った計画として現実味を帯びる。地域として人を呼び込む仕組みがあれば、小さな宿にも人が届きやすくなる。
補助の受付期間はたいてい短く、公募が始まってから組む相手を探していては間に合わない。皆さまの地域でも、次の公募を待たずに近隣の宿と採用の課題を持ち寄る場を設け、そこにDMOの担当者を招いてみることをお勧めしたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)
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