【特集】かんざし、宿泊施設向けに新サービス 従業員の笑顔と施設のブランドを守る カスハラ対策パッケージ「カスハラ用心棒」


カスハラ防止を訴えるアクリルスタンド。守護神をイメージさせるキャラクターが印象的だ

「抑止」「規程」「教育」「実働」「鉄壁の四つの防衛ライン」で対応

 宿泊プラン一括管理ツール「かんざしクラウド」など、旅館・ホテル向けに業務負担軽減ツールを開発・提供するかんざし(本社・東京都千代田区、秋山匡秀社長)は、社会問題化する「カスハラ」(カスタマーハラスメント)にワンストップで対応する「カスハラ用心棒」をこのほどリリースした。企業にカスハラ対策を義務付ける改正労働施策総合推進法が10月1日に施行するのを受けて、全国の宿泊施設に利用を呼び掛けている。

ハラスメントの実態

 東京商工リサーチが2024年8月に行った企業向けアンケート調査で、直近1年間でカスハラを受けたことがある企業は19.1%と、全体の約2割に上った。業種別に見ると、宿泊業が72.0%と最も多く、飲食店(64.8%)、タクシーやバスなどの道路旅客運送業(55.5%)が続いている。個人客と接することが多いサービス業や小売業が上位を占めたが、宿泊業の7割超は他の産業と比べて異常な数字といえる。

 「カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行した東京都が25年10月に行ったカスハラに関する実態調査では、カスハラと判断した事案による企業の具体的損害・被害は、「従業員の仕事への意欲・やりがいの低下」が77.0%と最も多かった。「宿泊業、飲食サービス業」に限っても76.7%と、ほぼ同様の数字となっている=図。

 厚生労働省の「令和7年上半期雇用動向調査」で、企業の離職率(1月1日現在の常用労働者数に占める離職者数の割合)は、全産業計が8.1%。16の業種別では「宿泊業、飲食サービス業」が13.1%と、最も高い。離職にはさまざまな要因があるが、前出したカスハラの多さや、それによる「意欲・やりがいの低下」が影響しているのは間違いないだろう。

 宿泊業界で人手不足、人材不足が叫ばれる中、観光庁が25年2月に行った「宿泊業の人材確保・育成の状況に関する実態調査」では、旅館が不足する人材について、「他の社員への教育・育成ができる人材」が57・0%を占め、「調理人(板前、シェフ、料理人など)」(55.4%)を抑えてトップとなっている。カスハラの観点から見れば、それを抑制したり、従業員をフォローしたりするための体制が現場で整っていない実態が見て取れる。カスハラから労働者を守る対策を企業に義務付ける改正労働施策総合推進法が施行されるのを前に、喫緊に取り組まなければならない課題といえる。

 カスハラ行為を行った者の宿泊を施設が拒否できるとした改正旅館業法が23年12月13日に施行されたが、全日本ホテル連盟が24年5~6月、会員に行った「宿泊拒否に関するアンケート調査」では、「不当な要求に対するスタッフ教育やマニュアルは整備されていますか」との問いに、「いいえ」が53.8%と、「はい」の46.3%を上回る。宿泊拒否という権利を有しているにも関わらず、その行使をするための体制も半数以上が未整備となっている。

カスハラ対策が義務化

 カスハラから従業員を守る対策がこの10月から企業に義務化される。改正労働施策総合推進法が昨年6月に成立。今年10月1日に施行されるのだ。

 具体的にどのような取り組みを行わなければならないのか。政府は「企業等におけるカスハラ対策の基本的な枠組み」として、次の9点を挙げる。

【カスハラを想定した事前の準備】

1.カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する。

2.カスハラの内容およびあらかじめ定めたカスハラへの対処の内容を労働者に周知する。

3.相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。

4.相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする。

5.特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する。

 【実際にカスハラが起きた際の対応】

6.事実関係を迅速かつ正確に確認する。

7.速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。

8.再発防止に向けた措置を講ずる。

9.以上の1から8と併せ、相談した労働者のプライバシー保護措置を講じ、相談者である労働者に対し不利益な取り扱いをしないことを定め、労働者に周知。

新サービスの内容

 「旅館・ホテルテック事業」「HRテック事業」「観光テック事業」を手掛けるかんざしは、宿泊業界に特化した対カスハラ体制の構築を支援する新サービス「カスハラ用心棒」を6月1日に提供開始した。10月に義務化される前出の取り組みをワンストップで支援する定額制のオールインワン・パッケージだ。

 同社は政府が掲げた前出の「企業等におけるカスハラ対策の基本的な枠組み」9点を(1)「方針の明確化・周知」(カスハラを許容しないトップの基本方針と就業規則の整備)(2)「相談体制の整備」(従業員が迷わず駆け込める、適切に対応可能な窓口の設置)(3)「事後の迅速な対応」(被害者のケア<メンタルヘルス等>と再発防止策の実行)(4)「プライバシー保護」(相談者の不利益取り扱い禁止と情報管理体制の構築)(5)「抑止のための体制」(悪質な事案に対する組織的・物理的な対処フローの確立)―と、「五つの必須項目」に再分類。これらの項目について、ワンストップで体制構築支援を提供する。

 「特に宿泊業界は他業界に比べて、お客さまが宿泊の期間中は常にきめ細かなサービスの提供が求められるため、スタッフの心身への影響は持続的で、負担が大きいという特性がある。しかし、慢性的な人手不足の傾向が叫ばれる昨今では、今回の法改正に必要な準備や体制構築や維持に割ける時間や、専門性を持った人材の確保が簡単ではない」(同社)。

 「カスハラ用心棒」は、そのような宿泊施設を全力で支援する。

 具体的なサービス内容を見てみよう。同社はこれらの義務化に対応しつつ、日常業務を止めない多層防衛システムとして「鉄壁の四つの防衛ライン」をうたう。

 一つ目が「抑止」(見える用心棒)。

 暴言・暴力、長時間拘束、不当な要求、無断撮影・SNS拡散といったカスハラについて、「ちょっと待って! その行為、カスハラかもしれません」「よりよいサービス提供のため、皆さまのご理解とご協力をお願いいたします」と記したイラスト入りのポスター(10枚)と、守護神をイメージさせるキャラクターが印象的な「STOPカスハラ」と記したアクリルスタンド(2セット)を契約した施設に提供。フロントなどに貼付・設置してもらい、「カスハラに毅然(きぜん)と対応する施設であること」を利用客に視覚的にアピールする。ポスターは施設のイメージを損なわないよう、複数のデザインを用意している。


ポスター。施設のイメージを損なわないよう数種類のデザインを用意している

 ポスター、アクリルスタンドには、「カスハラ用心棒加盟店」の文字も表記。「カスハラ防止対策のネットワークがあることを示唆、可視化し、その抑制力を強化する」(同社)。


カスハラ防止を訴えるアクリルスタンド。守護神をイメージさせるキャラクターが印象的だ

 二つ目が「規程」(運用の用心棒)。

 現場ですぐに使えるカスハラ対応マニュアルのひな型を契約施設に提供する。「録音の告知」「複数名対応」など、宿泊業のリアルな現場に即したもので、施設ごとに異なる要件を書き換えるだけで社内ルールが完成する。

 三つ目が「教育」(イメトレの用心棒)。

 カスハラ対応の研修に使える「実践トークスクリプト集」を提供。現場スタッフがいざという時に声を出せる実践力をこれにより養ってもらう。「不当な補償要求」「個人情報開示要求」など、実際の危険なシーンに応じた「NG返答」と「推奨返答」を網羅しており、ロールプレイング研修に即、活用可能だ。

 最後の四つ目が「実働」(こころの用心棒)。

 カスハラの現場で、同社と提携する専門スタッフが電話による引き取り対応を行う。「現場の負担を即座にゼロにする」(同社)。

 「上の者を出せ」「SNSに書くぞ」などと威圧的な発言や理不尽な要求が現場や電話で継続した際、「今後の対応は弊社専門の窓口に引き継ぎます」と通告。施設のスタッフが専門スタッフに架電し、状況を報告すると、同スタッフが顧客に直接電話し、宿泊施設の基準に沿って傾聴をベースに毅然と、かつ丁寧に対応を行い、事態を終了させる、という流れだ。

 専門スタッフは元警察官らの監修のもとで構成されたクレーム対応のプロチーム。「カスハラの本質は承認欲求や、行き違いによる感情の暴走」と、相手を「打ちのめす」のではなく、「理解し、いさめる」ことにポイントを置く。「論破ではなく、人情と対話で事態を収束させる」。施設の従業員にとっては、現場の矢面から外れ、「もう私が対応しなくていい」という現実により精神的負担が劇的に軽減。離職の防止にもつながる。

 サービスにかかる費用は、初期費用が5万円。月額費用は施設の客室数により異なり、前出の「抑止」「規定」「教育」をセットにした「ライトプラン」が9800円から。これら三つに「実働」をセットした「スタンダードプラン」が1万9800円から。「数百万円といわれる従業員1人の採用・離職コストを防ぐ、月額9800円からの投資」(同社)。

 サービスはほかに、カスハラがエスカレートして逆恨みやストーキングなど、従業員や施設に物理的な危険が及ぶ事態になった場合、「本物の用心棒」ともいえる警護スタッフを現地に派遣する「身辺警護オプション」を用意している。別途申し込みは不要で、かんざしが必要と判断した場合、追加費用なしに派遣する。

 改正旅館業法が2023年12月13日に施行。カスハラに当たる特定の要求を行った者の宿泊を施設が拒否できるようになった。施設にとって権利が生じたわけだが、一方で今回の改正法の施行で対策という義務も生じたことになる。特に中小施設や家族経営の施設にとって、対応は重荷で、整備が遅れるのではないかとの懸念がある。

 カスハラ対策をワンストップで支援する「カスハラ用心棒」は、これらの懸念を払拭するものと期待されている。


料金表

▷紙面PDF

▷カスハラ用心棒|かんざしシリーズ


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