竹内氏
随分前の話だが、初めて「ワンパンパスタ」にチャレンジした時、かなり手こずった。3人前300グラムと多かったのが、ハードルを上げた要因だ。なかなかパスタに火が入らず、やたらと時間が掛かってしまい、途中で水分が足りなくなって追加したら、今度はパスタがちょうどアルデンテになる頃、水分を飛ばし切れず、スープパスタのような状態に。味はおいしくできたので結果オーライだったが、別鍋でゆでる場合はタイマーに任せておけばよいのに、つきっきりでしょっちゅう混ぜなきゃならず、逆に面倒だ!と思った。
ご承知の通り「ワンパンパスタ」とは、パスタを別鍋でゆでず、フライパン一つでソースや具材とともに仕上げるパスタである。大きな鍋を用意して、お湯を沸かす必要もないから時短になり、ゆで用鍋と湯切りザル、具材やソースの調理用鍋などがフライパン一つになるので洗い物も減り、後片付けがラクチンと、今とてもはやっている。
元は2013年にアメリカのカリスマ主婦兼実業家が発行していた雑誌『マーサ・スチュワート・リビング』の6月号に「One―Pot Pasta」というレシピが掲載されたのが始まりといわれる。手軽さがウケ世界的に流行、その後日本でもワンポットパスタのレシピ本が刊行されたそうだ。
だが、実はイタリアでは古くから「リゾッタータ(risottata)」と呼ばれる調理法があり、マーサ・スチュワート氏もそれに着想を得てワンポットパスタを開発したのだとか。フードエディターの1人がイタリア旅行から帰国し、プーリアで食べたパスタが忘れられないと話したそうだが、それは間違いなく1967年にプーリア州バーリのレストランで誕生した「暗殺者のパスタ」だろう。パスタをゆでずにフライパンで焦げ目が付くほどカリッと焼き付け、少しずつ水分を含ませていく、トマト味の辛いパスタ。これぞリゾッタータである。
リゾッタータとは、パスタをリゾットのように煮詰めることを意味する。つまり、リゾット同様、水分を少しずつ加えながら煮ることで、パスタがソースを吸収しながらゆで上がっていく。最初から規定量の水に全てを入れる、効率重視のワンポットパスタとは方向性が違うのだ。リゾットは20分ぐらいつきっきりで混ぜていなきゃならないから、手間の掛からない時短料理とは真逆なのである。
パスタに含まれるデンプンが乳化を助け、水分と油分が混ざり合ってとろみがつき、麺とソースが一体化した濃厚な味わいになるリゾッタータは、「技法」として捉えられている。一方、日本のSNSでバズったワンパンパスタは、「フライパン一つで」という点にフォーカスした、時短お手軽が目的。これはこれで、簡単においしいパスタが食べられて、とても魅力的。
ちなみに、ナゼ暗殺者か? 殺人的に辛いのと、調理中トマトソースがはねて返り血を浴びたようになるからなど諸説あり。汚れる覚悟で、作ってみたいな♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




