【体験型観光が日本を変える456】「マーケットセンタリング」を理念に 藤澤安良


 夏休みが終わりに近づく先々週の千葉県、そして先週の石川県・富山県に続いて、30日は福井県でも大雨特別警報レベル5が発令された。

 24時間の雨量が千葉と同様に300ミリを超え、例年の1カ月分を上回るなど、統計史上最高の降水量を記録した。河川が氾濫や氾濫寸前だったり、川も道路も田畑も湖のようになり、その区別がつかなくなる中で車が立ち往生したり、家屋が浸水したり等のテレビニュース画面は毎回同じように見える。ゲリラ豪雨も線状降水帯も大雨特別警報も、特別なことではなく、日常茶飯事で常態化している。

 映像の激しさといえば、映画のCG画面と見紛うような地獄絵図さながらの衝撃の映像が飛び込んできた。ネパールと中国の国境付近で氷河の崩落による土石流があり、死者800人を超え、日本人旅行客5人を含む行方不明者3千人以上と想定もできない甚大な被害となった。異常気象が常態化し、地球温暖化が何年も前から深刻な問題といわれている。無策とまでは言わないが、地球規模での効果的な政策が求められている。

 熊本地震から1カ月が経過した。住居やインフラの復興は時間がかかる。心配は風評を含む被害を受けている地域の観光経済であることから、観光庁は8月28日、九州地方の旅行・宿泊を支援する「九州ふっこう応援割」を正式発表した。

 対象は九州7県。補助率は旅行・宿泊料金の50%(熊本県・鹿児島県は60%)で、割引の対象になるのは10月1日の宿泊分から。割引限度額は、1泊の宿泊単体商品・交通付き宿泊旅行商品が2万円、2泊以上の交通付き宿泊旅行商品が3万円、宿泊地が2県以上の周遊型旅行商品が3万5千円となっている。詳細は本紙で紹介されるであろう。私も、秋には割引の有無にかかわらず九州へ行くつもりであったので、活用したいと思う。

 コロナの際も割引があったが、施設側は割引額を想定して値上げをするという便乗値上げがあってはならない。応援したいと思う気持ちと割引がありがたいと思う気持ちの相乗効果が大切である。

 飲食店や観光入場施設、体験プログラム、レンタカーなども、政府の補助金はなくとも便乗値下げをして、旅行ムードを盛り上げる協力をすればいいと思う。お客に喜ばれる施策を行うことがリピーターを生み、薄利多売でも業績が上がることになる。

 「損して得取れ」は、もはや死語かもしれないが、私が宿泊施設や観光関係団体の役員、コンサルティングをしている中で、「わが社が心地良く損をする方法を考えろ」とのテーマで議論をすると、見事にお客が得するアイデアが続出する。それを決断し、実行すれば、結果わが社が得をすることになる。

 マーケットセンタリング(顧客中心的発想)は、私が45年前にセミナーを受講した時の心に残っているキーワードである。いつの世も、お金を払う人の身になって対応することが成功の道である。近年、自社のご都合主義が増えている中で、観光産業が基本理念とすべきは「マーケットセンタリング」である。

 
 

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