古川氏
食文化の高付加価値化を
次なる成長軸に
下関と聞けば、多くの人がまず思い浮かべるのは 「ふく(フグ)」料理だろう。伊藤博文公が140年ほど前に秀吉以来禁じてきたふく食を下関で解いた話は象徴的で、今日でも“下関に行くなら「ふく」を食べたい”という思いは多くの日本人の共通認識でもあると言っても過言ではないと思う。
一方で、下関の食の魅力は「ふく」だけではない。ウニ、クジラ、アンコウ、イカや青物をはじめとする海産物はこの地が山陰・山陽という二つの海に挟まれ、本州最西端という物流の結節点でもある地理的な要因も相まって、全国でもまれな食の多様性を生み出した。これらはかつて水揚げ量日本一を誇った下関漁港に代表される「食の街」としての潜在力を支えてきた。
令和5年度の下関市観光動態調査によれば、下関を訪れる観光客の86.9%が「食」を目的に来訪している―これは、観光戦略の中心に「食」を据えるべき必然性であると考えている。お越しになったお客さまにいかに高確率で満足していただくかが観光都市としての成長の鍵になると思う。
この中心的存在が唐戸市場だ。仲卸事業者が直接手掛ける新鮮な魚介類を手ごろな価格で味わえるライブ感、関門海峡を望む抜群のロケーション。市場そのものが“食の劇場”となり、周辺の宿泊・観光施設や商店街との連携による回遊を図るべく、取り組みが進められている。
2016年には「下関ふく」がGI(地理的表示)を取得し、国から産地ブランドとして認められた。商業捕鯨再開後は鯨肉の流通も本格化し、「鯨骨らあめん」など地元事業者による新商品開発も進む。歴史と上質感を備えた食文化を高付加価値化していくことが、下関の次なる成長軸になると捉えている。
さらに、観光客だけでなく市民による利用促進を図ることも重要と考えている。唐戸市場は「関門の台所」として対岸の北九州市民からも利用されている。関門両市民からの利用が増えれば地域経済の循環が強まり、さらなる相乗効果が期待できる。
このたび、下関市立大学における新学科創設を視野に、「食の街・下関」をさらに推進していくことについて前田晋太郎下関市長より意思表明がなされた。産官学連携による人材育成、事業者支援など、新たな可能性が拡がろうとしている。
われわれ観光業界は地元事業者とともに持ち場の活性化を図りつつ街づくりの中心となり、かつての栄華を誇った下関を超える、幅広い世代・民族に受け入れられる「食」への取り組みを考え、実行し、発信していきたい。

古川氏




