立教大学と対馬市が包括連携協定を締結 「1950年から続く交流」を全学体制に発展、環境学部25名が9月に現地フィールドスタディへ


 

立教大学(東京都豊島区、総長:西原廉太)と長崎県対馬市(市長:比田勝尚喜)は2026年8月25日、「持続可能な社会の実現に向けた相互連携及び交流に関する協定」を締結した。調印式は立教大学池袋キャンパスで執り行われ、比田勝尚喜対馬市長と西原廉太立教大学総長が協定書を取り交わした。

 両者はこれまで観光学部のインターンシップ受け入れやESD(持続可能な開発のための教育)研究所との研究連携など、長年にわたり多面的な交流を重ねてきた。今回の協定締結は、2026年4月の環境学部開設を契機として、これまでの取り組みを全学的な協力体制のもとでさらに発展させることを目的としている。

協定の三本柱

 協定の概要は以下の通りだ。

  • 持続可能な社会の実現にかかわる研究における相互協力及び連携
  • 持続可能な社会の実現を担う教育の実践、推進
  • 持続可能な社会の実現に関する市民、地域団体、企業、大学、行政との相互連携と人材交流など

 四方を海に囲まれた独自の生態系や海洋漂着ゴミの問題など、対馬市が持つ現代的な環境課題・地域資源を実践的な学びと研究の場として活用する。フィールドワーク、ゼミ活動、インターンシップ等の多様な連携プログラムを展開し、持続可能な社会の構築に資する人材育成と地域の活性化・課題解決に相互で寄与していく方針だ。

交流の歴史は1950年にまで遡る

 立教大学総長の西原廉太氏は協定締結にあたり、次のようにコメントした。

 「対馬市と立教大学との交流の歴史は長く、これまでに多くの学生と教職員が対馬市を訪れ、たくさんの学びを得てきました。もっとも古い記録では、1950年に文学部教員がフィールド調査を行った記録が残っているそうです」

 70年以上に及ぶ交流の歴史。その厚みが、今回の包括協定の土台となっている。

 西原総長はさらに続ける。「近年では、本学の全学共通科目にご協力いただくなど、ESD研究所を中心とする連携が行われています。本年4月に文理融合型で現地での学びを重視する環境学部を新設し、さっそく9月には、環境学部の必修科目『環境フィールドスタディ』で25名の学生が対馬市を訪問します。今回の協定締結を機に、これまでの交流関係をさらに充実・発展させ、対馬市の皆様と本学の学生・教職員が手を取り合いながら、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります」

9月14日から4日間、環境フィールドスタディを実施

 最初の具体的な連携プログラムとして、環境学部の学生25名が2026年9月14日から17日の4日間、対馬市でフィールドスタディを行う。

 科目名は「環境フィールドスタディ1」。「森里川海から得られる生態系サービスの”豊かさ”とは?」「豊かな生態系サービスを持続的に享受するための課題は?」の二つをテーマに、対馬市の協力のもと環境課題の現状を学ぶ。

 主な活動内容は以下の通りだ。

  • クジカ浜での海岸漂着ゴミの調査
  • クリーンセンター中部中継所で海岸漂着ゴミ処理見学
  • 志多留集落で野生生物管理、耕作放棄地などに関するフィールド調査
  • 対馬野生生物保護センターなどでツシマヤマネコ保全に関する調査

  海岸漂着ゴミの実態調査から、絶滅危惧種であるツシマヤマネコの保全活動まで。対馬という「現場」を丸ごと教材とした4日間の学びだ。

対馬市長「産学官民の共創で課題解決を」

 一方、対馬市長の比田勝尚喜氏も協定締結に向けた思いを語った。
 
 「立教大学とは、これまで観光学部やESD研究所との多面的な交流や研究・人材育成の取り組みを重ねてまいりましたが、今回の協定締結により全学的な連携へと発展することを大変心強く思います」

 比田勝市長は対馬が抱える課題についても明確に述べた。「国境離島である対馬市は、豊かな生態系に恵まれる一方、気候変動の影響や海ごみ問題など地球規模の視野に立って解決 すべき環境・社会課題を抱えています。そのため、対馬市は課題解決と魅力ある地域資源を生かした持続可能なしまづくりを推進するために、産学官民の共創による取組みを推進しています」

 そのうえで学生への期待をこう示した。「こうした現場を学生の皆様の『学びと実践の場』として生かしていくことで、立教大学が掲げる『専門性に立つグローバル教養人』の育成推進や、対馬における課題解決と未来の人材育成に向けた力強い共創に繋がることを期待しております」

万博の基調映像制作も 学生が対馬の海ゴミ問題を発信

 協定締結に先立つ連携事例としては、2025年大阪・関西万博での映像制作がある。

 立教大学のコンテンツ制作・発信団体「Bilder.」の学生が、大阪・関西万博のBLUE OCEAN DOMEで開催された「対馬ウィーク」の基調映像を制作した。制作した3本の映像のうちの一つ、『対馬と、プラスチックと、私たちの暮らし』は、対馬の海岸の現状から私たちの暮らしの元へ遡り、海と日常のつながりを表現した作品だ。

 動画はYouTubeで公開されている(https://www.youtube.com/watch?v=1EbESNTfUwA)。

「国境離島」対馬が持つ環境課題の重み

 対馬は長崎県に属する国境離島だ。豊かな生態系を誇る一方、四方を海に囲まれた地理的条件から海洋漂着ゴミが深刻な問題となっている。ツシマヤマネコをはじめとする希少野生生物の保全、耕作放棄地や野生生物管理といった中山間地域特有の課題も抱える。

 気候変動の影響を直接受ける島という立地は、地球規模の環境問題を「現場」として体感できる学びの場でもある。立教大学の環境学部が新設初年度からこの地をフィールドスタディの舞台に選んだのは、そうした対馬の持つ現代的な環境課題と地域資源の豊かさによるものだ。

 今回の包括連携協定により、観光学部のインターンシップ受け入れやESD研究所との研究連携にとどまらず、環境学部をはじめとした全学的な教育・研究プログラムへの展開が本格化する。

 持続可能な社会の実現という共通のビジョンのもと、大学と離島自治体が手を結んだ。1950年から続く交流の歴史は、新たな段階へと踏み出した。

 

 
 

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