【体験型観光が日本を変える454】災害、社会課題に立ち向かう 藤澤安良


 台風15号は茨城県南部に上陸し、通常とは逆行するコースを取って若狭湾に抜けて熱帯低気圧になったのに、その影響もあってか、8月13日に線状降水帯が居座り、千葉県内14市にレベル5大雨特別警報が発表された。

 千葉市内では、24時間以内に351ミリの観測史上最高の降水量があった。多くの家屋に浸水する被害があったが、特別警報区内にある自宅は被害がなかった。

 しかし、これほどの降水量や雷鳴は生涯初めての経験と年配者が口をそろえる。予想だにしていない地域での水害に改めて自然災害の脅威を確認することになる。

 自然災害といえば、熊本地震。7月28日に発生した震度7の地震である。1カ月近くになり、交通インフラの中で自動車道は復旧したが、今なお断水していたり、避難所生活者も3千人近くになる。一日も早い復興が求められている。

 そんな中で被害が直接なかった近隣市町はもとより隣県までも観光が自粛され、宿泊施設のキャンセルや先の予約が入ってこないなど、損害額は20億円を超えると推定されている。旅行業界が競い合って九州復興応援ツアーを設定することが望ましい。

 先頃、農林水産省がわが国の食料自給率(カロリーベース)を発表したが、37%と史上最低となった。旅の醍醐味(だいごみ)である地産地消の郷土料理が求められているのは言うまでもない。

 チェーン化した宿泊施設ではセントラルキッチンで、どの地域の宿に泊まっても同じ味のものが出てくる。こうした中で、信州の山奥でのマグロの刺し身や北の海に生息するカニなど、全く当地では取れない食品でつくった料理が少なくない時代に地産地消にこだわることは、地域からの食材調達比率が高まり、農林水産業を応援することにもつながる。

 料理原価を絞ったり、料理人の手抜きを助長するような、出来合い惣菜がはびこり過ぎていて、旅の食の魅力が毀損(きそん)されている。観光と1次産業を結ぶことで地域活性化にもつながる。農水省と観光庁がコラボしてその推進政策を考えるべきである。

 「和食:日本人の伝統的な食文化」は、ユネスコの無形文化遺産にもなった。しかし、和食を家庭でつくる機会が減りつつあり、ついには絶滅危惧種になる。

 さらに杜氏や蔵人がこうじ菌を用いる、500年以上の歴史を持つ日本の酒造り技術として、「伝統的酒造り」が2024年12月5日にユネスコの無形文化遺産に登録されている。食と酒が世界に認められている国として、誇りをもってこれらを観光に生かしてほしい。

 農業従事者か2006年に210万人であったが、20年後の今年、98万6600人となった。半減したことになる。刺し身とパンは合わないし、焼き魚もみそ汁もパンとは合わない。米あっての和食である。そして、米あっての日本酒である。

 日本の食文化を後世に伝えるためにも、食料生産現場である農林水産業を守るためにも、観光産業は食文化にこだわるべきである。観光産業は社会課題に立ち向かう時である。

 
 

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