【Trip.com上海カンファレンス特集】ホテル幹部座談会 西武・プリンスホテルズワールドワイド×阪急阪神ホテルズ×東武ホテルマネジメント


出席者の皆さん

 Trip.comグループは5月27日、グローバル・パートナー・カンファレンス「Envision 2026」を上海西岸国際コンベンション・エキシビションセンターで開いた。世界78の国と地域から宿泊施設を中心としたサプライヤー(取引先)3500人以上が出席。全体の9%にあたる315人以上は日本からの参加者だった。観光経済新聞社では、日本から出席したホテル・旅館の幹部とTrip.comの日本代表にお集まりいただき、現地で座談会を行った。ご出席者は、東武ホテルマネジメント代表取締役社長執行役員の堀川順弘氏、阪急阪神ホテルズ取締役常務執行役員の吹谷佳孝氏、西武・プリンスホテルズワールドワイド伊豆地区総支配人の和田恵里氏、三養荘(西武・プリンスホテルズワールドワイド)支配人の吉浦正博氏、Trip.com International Travel Japan 代表取締役社長の高田智之氏。司会はkankokeizai.com編集長の江口英一が務めた。

■出席者
西武・プリンスホテルズワールドワイド 伊豆地区総支配人 和田恵里氏
三養荘(西武・プリンスホテルズワールドワイド) 支配人 吉浦正博氏
阪急阪神ホテルズ 取締役常務執行役員 吹谷佳孝氏
東武ホテルマネジメント 代表取締役社長執行役員 堀川順弘氏
Trip.comInternationalTravelJapan 代表取締役社長 高田智之氏

カンファレンスの印象・感想

 ――今回のカンファレンスの印象、ご感想はいかがですか。昨年もご参加されている場合は、昨年と比較してどう感じられましたか。

吹谷 昨年初めて参加させていただき、その規模の大きさや人の多さに大変驚きました。

 今年は2回目ということで、より冷静に会場全体を見渡すことができました。会場の設えには趣向が凝らされており、足を踏み入れた瞬間にTrip.comさんの世界観に引き込まれるような感覚をおぼえました。

 また、世界各国から多くのパートナーが参加されているのを目の当たりにし、改めてTrip.comさんのパートナーシップの強さを実感しました。


吹谷氏

堀川 私は3年連続で参加させていただいており、今年は4月1日から代表取締役社長執行役員という立場で臨みました。3500人以上の方が集まっていると聞き、驚きました。

 当社でもTrip.comさんの取扱高は3年ほど前はあまり多くない状態でしたが、この3年間で大きく伸びてきました。浅草のホテルがTrip.com経由の送客でナンバーワンになっているという話は、社内でも高田社長の手柄として語られているほどです。

 今回のプレゼンテーションでも鉄道(レイルウェイ)が重要なカテゴリーとして前面に出ていたことが印象的でした。ホテルだけでなく、観光産業全体をどうつなげていくかという視点で、Trip.comさんならではの勝ちパターンをつかんでいると感じました。

吉浦 今回、初めてカンファレンスに参加させていただきました。昨年も招待をいただいていましたが、担当者が出席していました。

 今回は会場の雰囲気に圧倒されました。IT技術、先進技術を踏まえた演出に、国際会議のような圧倒的な存在感を感じました。

和田 私も今回初めて参加させていただきました。旅館という業態でのご招待をいただき、ホテルがメインの雰囲気の中で大変勉強になりました。

 昨日の本社ツアーに参加させていただいた際に特に印象に残ったのは、システムの先進性以上に、案内してくださるスタッフの方のモチベーションの高さでした。旅の後で疲れている参加者も多い中で、自分の言葉で熱意を持って語ってくださり、最後思わず声をかけてしまいました。AIが人間に取って代わるという議論がある中で、AIでできる効率化の部分と、人間だからこそできる提案力をうまく共存させていくという話も印象的でした。

 また、コールセンターのブースでは、オペレーターが1万人規模で、「Hear your smile(耳で笑顔が伝わる)」という言葉で顧客対応への姿勢を表現されていたことが心に響きました。

 カンファレンス自体も、参加者を喜ばせようというエンターテインメント要素が満載で、各国の盛り上がりがすごかったです。

地域別インバウンドの現状

 ――今年のインバウンド宿泊需要について、昨年からの変化や特徴的なトレンドを教えてください。Trip.com経由の予約動向も含めてお聞かせください。

吹谷 当社は東京・大阪を中心に拠点を構えておりますが、東日本と西日本で実績に大きな差が生じています。

 昨年後半以降、一部市場における渡航動向の変化を受け、東日本・西日本ともに宿泊需要への影響が見られました。東日本の拠点では、その減少分を欧米からの観光客などで補うことができており、全体としての落ち込みはそれほど大きくありません。一方、西日本の拠点ではいまだ厳しい状況が続いています。

 このような状況下において、Trip.com様とは密に連携をとり、その強みである韓国路線などを生かしながら、一定の回復を図っています。私どもでは他のOTAの取扱高が減少している一方で、Trip.com様の取扱高は増加傾向にあり、特に東アジア地域からの送客は前年比で約110%増加しており、大変感謝しています。

堀川 市場環境の変化はありましたが、東京エリアに関しては4月が過去最高の宿泊実績となっています。銀座や浅草のホテルでは欧米客の比率が高く、マリオット系ブランドを活用しながら欧米客を約70%確保できているところもあります。

 一番厳しいのは宇都宮エリアで、単価が大きく下がっています。それでも稼働率は85%程度と高いので、今後は単価をいかに上げていくかが課題です。

 海外のお客さまは1泊2名で約250ドル(3万8千円程度)を目安として支払うという感覚がある中で、地方エリアでも単価向上の余地はあると考えています。

 一方で、日本人の宿泊料金が上がりにくいという構造的な問題もあります。企業の出張手当が1万円から1万2千円程度のままでは、東京の現在の相場には追いつきません。外国人客と日本人客の価格差という問題は、業界全体で向き合わなければならない課題だと思っています。


堀川氏

和田 伊豆エリアは、もともとインバウンドがそれほど多くない地域です。私が担当する川奈ホテルでは、昨年度のインバウンド比率が9%程度でしたが、今年はすでに月次で17%に達しているところもあります。ゴルフを目的とした宿泊客が多く、全体の7割程度がゴルフ関連です。

 インバウンドのお客さまは中国本土、台湾、オーストラリア、北米が多く、韓国からもツアーでいらっしゃる方が増えています。通年で15%程度を見込んでいましたが、それを上回る勢いです。一方で、ベースが国内客で埋まりやすいという構造もあり、インバウンド向けの枠をどう確保していくかが課題です。

 今後は悪天候時でもホテル自体を目的に来ていただけるようなコンテンツ、たとえば夜間プール営業やクラシカルな映画のロビー上映なども今年から試み始めています。海外のお客さまへご案内した際の反応がとても良く、今後の取り組みとして強化していきたいと考えています。

 また、Trip.comグループ様とのトピックスとしては、静岡県知事、静岡県ゴルフ場協会の強力な後押しのもと、最上位ステータス会員様向けのイベントを当ホテルで開催いただいたことも、ゴルフ業界のインバウンドツーリズムの取り組みの一環として各所から反響がありました。

 ここでは当施設が世界ゴルフ場100選に選出されていることを受けて「その唯一無二の景観は観光資源そのもの」とTrip.com様側からのコメントにもありました通り、私どもは地域の魅力の発信源としての役割として、官民一体となり一気通貫でインバウンドゲストを受け入れることが、世界への日本の魅力発信につながると確信しています。その意味合いで、今回は単なるスーパーラグジュアリー層に限られた単発イベントではなく、地域や国のブランドを上げていく象徴的なイベントであったと感じました。

吉浦 三養荘は30室の旅館で、1泊2食のプランで販売しています。2024年6月からTrip.comさんを通じたインバウンドの受け入れを本格的に始めました。それまでは外国人のお客さまはほとんどいらっしゃらない状態でしたが、Trip.comさんのおかげで、現在は25%程度まで上昇しています。特に東アジアをはじめ、欧米など幅広い国・地域からお客さまにお越しいただいています。

 旅館に来てくださるお客さまの多くは、都市部のホテルに泊まりながら、日本を味わうために和を求めていらっしゃいます。本物の和の体験を提供することが、旅館としての最大の強みであると実感しています。

 建物は昭和4年(1929年)に旧三菱財閥・岩崎家の別邸として建てられ、1947年から営業を開始しました。1988年には建築家・村野藤吾氏設計の新館が加わり、その本館は有形文化財にも指定されています。日本庭園と歴史的な建築を目的に来てくださるお客さまが増えており、SNSで発信いただいた口コミが集客の広がりにつながっています。月見台を復元し、月を見ながらお酒を楽しめる空間を提供するなど、インスタ映えを意識した施設改善も進めています。ジャズシンガーを呼んだ音楽イベントも開催しており、宿泊以外の外来のお客さまにも口コミを広げていただけるよう取り組んでいます。

Trip.comの強み

 ――Trip.comが他のOTAと比較して魅力的だと思われる点はどこでしょうか。

吹谷 私どもが最も強く感じているのは、Trip.com様のサポート体制の素晴らしさです。最前線でお客さま対応をしている現場スタッフの声を聞いていると、OTA関連で寄せられる苦情のほとんどは、マッピングエラーなどのシステムトラブルに起因するものです。他社のOTAは、マッピングエラーが発生しても、十分な対応を得られない状態が散見されます。例えば「ツインを予約したのにダブルだった」というような事態が、ある拠点では、20件近く同時に発生しても、改善されることなく同様のトラブルが繰り返されることがあります。さらに電話がつながらず、折り返しの連絡や、メールの返信もないという状況も報告されています。

 一方、Trip.com様においては、そういった問題に関する報告は入ってきておりません。AIだけでなく人手をかけてサポートするというTrip.com様の方針は、ホテル事業者として非常に共感できる点です。ぜひそのサポート体制を今後も継続していただきたく存じます。

堀川 新幹線まで予約できるようになったことが非常に印象的です。JRとの連携というのは相当なことをやり遂げたのだと思います。24時間体制のサポートも、コスト面でどうなのかと思う部分もありましたが、Trip.comさんであれば、それだけの投資も可能だということだと思います。以前、トラブルがあった際も、しっかりと対応していただきました。サポート体制の質は他のOTAとは別格です。

和田 サプライヤー側として最も助かっているのは、キャンセルや到着時間確認といった業務の負担を軽減してくれる点です。旅館では1泊2食の販売がメインですので、夕方5時を過ぎても到着しないお客さまがいると、キャンセルなのか遅れているのかが分からず、現場は非常に不安になります。

 Trip.comさんのサポートセンターに連絡すると、30分以内に返答が入ってきます。「遅くても7時半には到着します」といった確認が取れるだけで、現場の心理的な負担は大きく違います。他のOTAではノーショーなのかキャンセルなのか、予約の取り間違いがないかと、ずっと心配しなければなりません。AIが発達する中でも、何かあれば人が出向くというスタンスを持っていらっしゃる点は、他のOTAと際立って違うところだと感じています。


和田氏

吉浦 新幹線のセット販売が始まってから、タクシーの送迎手配が圧倒的に減りました。これも現場にとっての大きな変化です。Trip.comさんの最先端のAI活用と、人によるサポートの両立は、現場として大変ありがたいです。

 Trip.com経由で予約されたお客さまについては、到着確認なども迅速に対応いただけるため、安心して現場の運営に集中できます。Trip.comのグローバルなネットワークと世界への発信力は小規模な旅館にとっては非常に心強いです。


吉浦氏

高田 新幹線の予約販売については、正式リリースが今年2月です。大手OTAの中で、JRと正式に契約して新幹線を販売しているのはTrip.comだけです。開発には約2年かかり、大規模なプロジェクトとなりました。

 私たちは、この取り組みを短期的な成果だけで評価するものではなく、日本旅行全体の利便性を高めるための重要な基盤づくりと位置付けています。

 新幹線をご利用いただくお客さまが、そのままホテルや航空券なども含めてシームレスに旅行を計画・予約できる環境を整えることで、より良い旅行体験を提供していきたいと考えています。

 それに加え、日本に来られた旅行者の方が不便を感じないようにするためというのが最も大切な理由です。スマートフォン一つで新幹線を予約し、そのまま乗れる体験は、20年前には考えられなかったことです。日本の交通インフラはとても優れていますが、それを多言語でオンラインに集約し、外国人旅行者がスムーズに使えるようにするというのは、まだ課題の多い領域です。既存のインフラをアプリの中にいかに集約できるかが、今後の鍵だと思っています。


高田氏

Trip.comへの期待

 ――Trip.comに今後期待することは何ですか。

吹谷 現在も、Trip.com様のご担当者様は、単なるOTAの営業担当者としてではなく、何でも相談できるパートナーとして当社にご支援をいただいております。どのような販売戦略で、どこにアプローチすべきか、また当社の各ホテルがどの程度の比率で販売したいかといった意向まで、深くご理解いただいた上で、具体的な施策をご提案くださっています。ご対応の早さはもちろんのこと、施策実行後の効果検証を迅速に行っていただいている点は非常にありがたく感じております。

 事業環境変化のスピードがますます高まる中、今後はさらにTrip.com様との連携を一層強化し、施策の実行スピードをさらに高めていきたいと思っています。

堀川 安易な値引きはしないでいただきたいというのが率直なお願いです。東武とマリオットという二つのブランドを持つ立場として、ブランド旅行の付加価値をどう高めていくかを考えています。たとえばメゾンの料理を提供するといった独自の体験価値をどう打ち出すかも課題ですが、具体的な方向性はまだ模索中です。単価の重要性は非常に大きく、銀座エリアのホテルで1万円下がると、売り上げへの影響は何億円にも及びます。施策の方向性について、担当者だけでなく上位にも情報を共有していただけるとありがたいです。

 季節ごとのコンテンツについても、桜・紅葉のシーズン以外をどう盛り上げるか、例えばJRの「そうだ、京都へ行こう」のような切り口で、雨の日ならではの楽しみ方や冬の夕暮れの富士山といった体験価値を打ち出せると、日本の観光がさらに豊かになると思います。雨天時でも楽しめる観光プランの提案は、リピーターを増やすためにも重要です。

和田 Trip.comさんが持つデータは非常に有用だと感じています。どの国のお客さまがどの時期に動くのか、デスティネーションとしての需要動向をリアルタイムで把握できる環境は、他のOTAにはない強みです。その情報を施設側と共有しながら、今はこのコンテンツが足りないといった細かい示唆をいただければ、プロモーションの精度が上がると思います。

 日本の文化的な概念、たとえば花鳥風月というコンセプトを海外のお客さまに伝えるストーリー性のあるコンテンツ展開も、OTAとしてのプラットフォームで実現できると面白いと思います。館内ツアーや歴史を伝えるレジェンド案内なども、宿泊施設の物語を旅行者に届ける手段として注目しています。

吉浦 Trip.comさんの最先端のAI活用を学ばせていただきたいと思っています。これだけ多くの国のお客さまをお迎えできるプラットフォームをお持ちであれば、各国への発信力を最大限に生かしていただきたいです。特定の国に依存しない形で、世界に向けて三養荘の魅力を発信するための手段として、Trip.comさんのプラットフォームを大いに期待しています。

高田 本日はお忙しい中、上海でお時間をいただきありがとうございます。世界的に外的要因が多い観光業界において、これだけの立場の方々がお集まりいただけることは大変ありがたいことです。

 皆さまのお話を聞き、いくつか今後の方向性として確認できたことがあります。まず一つ目は鉄道です。日本は島国であり、地方への移動を支える既存の交通インフラは充実しています。しかしそれが多言語でオンラインに集約されているかというと、まだ課題が多い。新しいことをやるというよりも、既存のインフラをアプリの中に多言語で集約し、外国人旅行者がオンラインでスムーズに使えるようにするところから始めるべきだと考えています。

 二つ目は、近距離旅行のリピーター獲得です。現在の地政学的な状況が続く中で、北アジアを中心とした近距離旅行者が増えていく可能性があります。一度日本に来た方に再び来ていただくためには、次の来訪動機となるコンテンツが必要です。特別なイベントの魅力をスマートフォンの小さな画面でどれだけ伝えられるか。そのためのデザイン開発が大きな課題です。

 三つ目は、本日皆さまからいただいたサポートへの評価です。われわれはAIを積極的に活用しながら、足元では人の採用も続けています。パートナーの課題から逃げず、一つ一つ向き合い続けることが、Trip.comにとって今唯一の勝ち筋だと思っています。そのため、短期的な利益を追求するのではなく、人材やサービスへの投資を重視し、宿泊、鉄道、航空をはじめとする旅行全体で持続的な成長を目指しています。また、ライブ・エンターテインメントを含む新たな旅行関連サービスにも積極的に取り組んでいく方針です。これからも、パートナーの皆さまとユーザーの双方に価値を提供し続けることを大切にしてまいります。


出席者の皆さん

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