静岡県の鈴木知事とJR東海との協議を経て、約9年間にわたって着工できなかった中央リニア新幹線の静岡工区の工事が始まった。2027年開業とのふれこみであったが、2036年以降の完成にずれ込むとの報道があった。先の見通しが立っただけでも関係地域においては朗報である。
一方で、物価高対策の目玉である食料品の消費税0%は率と時期の調整がつかず、いまだに見通しが立っていない。その間、企業の倒産は今年の上半期に5346件と、過去最悪の状況である(東京商工リサーチの調査)。その多くが中小企業であり、これらの企業は厳しい局面を迎えている。飲食店でも注目されるラーメン店の倒産は36件。「前年同期比44.4%増となり、統計開始以来、過去最多を更新した」と調査は伝えている。
ラーメン店のみならず、飲食業界が苦境に陥っている原因として、食材価格やエネルギーコストの上昇、そして業界で続く人手不足や最低賃金の引き上げにより、人件費がさらに膨らんでいることが挙げられる。
さらには円安。低い労働生産性や産業競争力の低下、少子高齢化の進行などがその要因である。円安とホルムズ海峡の不確定要素が企業の経営に大きく影響しており、倒産が相次ぐのはある意味当然である。旅館・ホテルを含めたサービス業も中小企業が多く、対岸の火事として傍観している訳にはいかない。
テレビは「梅雨明け・猛暑が続く・熱中症」と、エアコンの購買をあおっているかのようなワードの露出が多い。そのエアコンの売上額が従来から65.6%上昇しているという。2027年4月から家庭用エアコンの省エネ基準が大幅に引き上げられ、低価格帯モデルの製造・販売が制限される。今後の価格上昇や修理のリスクが懸念されることから、今年の購買意欲が高まっているとされる。当社は賃貸の事務所であるが、6月に故障もしていない2部屋のエアコンが静音で効きの良い新品に変わった。
夏の自宅が快適であれば、熱中症アラートが頻繁に出る野外には出ないとする意識が働くのも無理はない。従って、心配なのは夏休みの旅行の動きである。「物価高」が約7割の国民の脳裏にあり、夏に休日を取得しない人や、3人家族で1人2万円程度の予算しかない人がいるなど、庶民の財布のひもは固そうである。
昨今は旅行会社主催の募集旅行が減っていて、パック旅行の販売額がコロナ前に比べて47%もダウンしている。
私は観光全体への消費が例年より激減するのではないかと危惧している。政府は近々の課題を先送りせずに、会期延長してでも国会審議を進め、国民的な問題である物価高対策を進めなければならない。さらには、観光経済の停滞を吹き飛ばす起爆剤になるような政策を期待したい。
当然ながら、地方行政も観光業の当事者も同様に、マーケットを大きく動かす増売戦略を打ち出し、戦術を駆使しなければならない。
国民の意識の中にある心配事が解決すれば、晴れて心の中に余裕が生まれ、旅への動機にもなる。




