北中米で行われているサッカーのワールドカップは、日本の多くのサポーターが渡航し、盛り上がった。日本選手に大きな期待があったが、健闘むなしく優勝候補のブラジルに敗れ、ベスト32で敗退した。それでも選手の帰国を成田と羽田の両空港で出迎えた多くのサポーターがその健闘をたたえた。このイベントは海外への渡航者が伸びない今日、とりわけ少ない梅雨時の渡航者数を大きく押し上げることになった。
7月から2566品目の食品値上げがあり、国民生活がさらに圧迫される。さらには1ドル162円にもなる円安で、海外旅行へのマインドが下がっている。
そんな中、旅券の取得者数の割合が国内で17%と、米国50%、台湾60%、韓国40%と、近隣諸国や先進国の中で極端に少ないことが話題になっている。そのことを受けてかその申請手数料が最大7千円値下げされ、申請窓口に長蛇の列ができる光景が報道された。夏の海外旅行の伸びが期待される。
ただ、渡航者数伸び悩みの原因は申請手数料の高さではなく、輸入食材を中心とした物価高による家計圧迫と円安だ。燃油サーチャージの値上げも大きく、航空運賃や旅行代金全体に大きく影響している。
政府の「戦略17分野」に、2040年度までに官民で370兆円を投資するとの報道があった。一方で、輸入食品に頼る日本が苦戦している食料自給率の向上はどうするのか。何年も前から食料自給率向上を目指す農水省だが、何年間もカロリーベース38%前後で推移しているのはどうしたことか。先のコメ問題で農業政策の難しさが露呈した。地球温暖化による海水温上昇で魚の生息域が変化している現状をどう受け止め、どのように漁業を変えていくかの課題も大きい。
いずれにしても、減り続ける1次産業従事者とその後継者問題は避けて通れるわけもない。政府は農林水産業の成長を考えなくてよいのか。原油と同様に、食料を他国に頼ってばかりでは有事に生きられない。
観光は巨大投資がなくても成長させることができる。自然、暮らしの営み、食、歴史文化などを活用した体験交流プログラムが充実してきたことも功を奏し、インバウンドの入り込みが激増した。この取り組みこそが、都市から地方への人の流れをつくり、地方の活性化を実現させる。加えて、農山漁村の食や1次産業と絡めることで、旅に付加価値を付けられる。
しかし、この分野は掛け声だけで、具体的な政策が見られない。一部の都市に集中する旅行者を全国各地に分散させるための投資が求められる。同時に、国民の可処分所得を増やすことで、誰もが旅行をできるようにする生活基盤の確立が求められている。
日本の地方と食料生産を守るために、観光、そして、1次産業を政府の戦略分野の18、19番目に入れることが必要だ。これらを衰退産業ではなく、成長産業と認識して投資をしなければ、日本の地方は滅びてしまう。東京の食料自給率は1%を切っている。CO2を吸収し、酸素を作り出している森がある場所、食料生産を行っている場所は地方であることを忘れてはならない。




