竹内氏
恥ずかしい話だが、先日、救急車のお世話になった。腹部の激痛でのたうち回っている筆者を見て、家族が119番してくれたのだ。
救急外来で採血しCTを撮り、その後消化器内科に回された。担当医に最近刺し身など生モノを食べたか聞かれ、数日前にイカの御造りをたくさん食したと伝えると、アニサキスの可能性もあるから、念のため胃カメラやりましょうか?と。あの気味の悪い虫がお腹の中に居たら…とゾッとし、「お願いします」と即答。
結局アニサキスではなく、軽度の十二指腸潰瘍と分かった。入院を勧められたがお断りすると、薬の服用と数日間の安静、そして3日間の絶食が必要だと。
最近体が重くなっていたので、ちょうどファスティングの機会になる。ファスティングとは断食のこと。治療のため医師の指示で行うのが「絶食」で、「断食」は本来修行など宗教的な意味を伴った。近年はダイエットや美容目的の断食も多く、その商業化とともに「ファスティング」というオシャレな表現が増えたそう。
メリットはさまざま。内臓を休めることで腸内環境が整い、体内の老廃物や毒素をデトックスでき、免疫力の向上や肌荒れの改善などが期待できるという。また、エネルギー源として体脂肪が使われるため、当然ダイエット効果も! だが、デメリットもあるそうだ。
低血糖状態に陥り、倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛を引き起こすことも。ビタミンやミネラルなど必要な栄養素が不足し、神経障害や脚気、免疫力の低下など、それぞれの栄養素の欠乏症に。絶食状態が長くなると、脂肪だけでは足りずに筋肉まで分解してエネルギーを作ろうとし、呼吸筋など生命維持に必要な筋肉まで分解されてしまうので、非常に危険なのだという。
元の食事に戻す時も、注意が必要だ。急に普通に食べてしまうと、インスリン分泌が過剰になり、大量のリンが消費され、低リン血症に。リンは酸素運搬に必須なので、欠乏すると心不全や呼吸不全、意識障害などを起こし、重篤な状態に陥る。これをリフィーディング症候群というそうだ。
歴史上残っている最も古い記録は戦国時代。天正9(1581)年、当時の羽柴秀吉が、鳥取城を兵糧攻めし、落城後の事件が『豊鑑』巻一に記されている。籠城していた人々を哀れんだ秀吉がかゆを振る舞ったところ、「多く食せし者は忽(たちま)ちに死に、少し喰(く)ひしは恙(つつが)なかりけりとなむ」。つまり、飢餓状態で急激に炭水化物を大量摂取した者は死に至り、少量なら問題なかったのだ。まさにリフィーディング症候群であると考えられ、世界的に貴重な歴史資料とされている。
絶食後のリバウンドには気を付けようと思っていたが、それどころじゃない。3カ月の籠城と3日の絶食ではワケが違うが、これを知って、いきなり焼き肉を爆食したり、ワインをガブ飲みするのはやめようと心に誓った。健康でおいしく食事ができるだけでシアワセなのだ。改めて感謝したい。呑(の)めることもネ♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




