旅館経営総合研究所の役員陣(写真=中央左が内田社長)
熱海・古屋旅館の経営知見を体系化、10〜35室規模の旅館を横断支援
株式会社旅館経営総合研究所は6月12日、事業を開始した。本社は静岡県熱海市東海岸町5-24。代表取締役は内田宗一郎氏。同社は2026年3月17日に設立されており、事業開始まで約3カ月を経ての本格始動となる。
同社は、創業220年を迎える熱海の老舗旅館「古屋旅館」の経営で培った実証知を基盤に設立された。集客、組織づくり、運営改善、人材採用・育成、DX推進、投資判断など、旅館経営に関わる幅広いテーマを横断的に支援することを目的としている。

人材不足・固定費高騰…中小旅館が直面する構造的課題
近年、全国の旅館業界では人材不足や固定費高騰、後継者不足、デジタル化への対応など、多くの経営課題が顕在化している。
特に深刻なのが、10〜35室規模の中小旅館だ。大手ホテルチェーンと比べて人材や資金面での制約が大きく、地域に根差した魅力ある宿であっても、持続的な成長や事業承継に課題を抱えるケースが少なくない。
課題はそれだけにとどまらない。原材料費・光熱費の高騰、設備更新への投資負担、OTA(オンライン旅行代理店)依存による収益構造の問題も深刻化している。加えて、多くの旅館では経営改善や組織づくり、DX導入などについて相談できる相手が限られているという実態もある。
同社はこうした状況について、「経営課題は売上や採用だけで解決できるものではなく、組織運営、人材育成、設備投資、情報発信などが複雑に絡み合っている」と説明する。

「理論や一般論だけに依存しない」実装型の支援モデル
旅館経営総合研究所が掲げる支援の核心は、「実証知を起点とした支援」だ。
理論や成功事例の紹介にとどまらず、実際の旅館経営の現場で成果につながった知見を体系化し、再現可能な形で提供する。戦略立案だけで終わるのではなく、現場に定着し成果につながるまで伴走することを重視した「実装型」の支援モデルを採用している。
10〜35室規模の旅館に特化している点も同社の大きな特徴だ。限られた人員や資金の中でも利益を残し、持続可能な経営を実現するための現実的な支援を行うとしている。
さらに、売上向上・採用・DXといったテーマを個別に切り出して扱うのではなく、「経営」「組織」「現場」の3つの視点から旅館経営全体を一つの構造として捉えながら改善を進める点も、同社のアプローチの特徴といえる。

提供する5つのサービス
旅館経営総合研究所が提供する主なサービスは以下の通りだ。
経営壁打ち・意思決定支援 経営者が抱える課題や迷いを整理し、優先順位を明確化することで次の一手を具体化する。売上向上施策や投資判断、新規事業、事業承継など、重要な意思決定を支援する。
採用・育成・定着支援 採用活動の設計から教育体制の構築、人事評価制度の整備までを支援し、人が集まり、育ち、長く働き続けられる組織づくりをサポートする。
研修・講演サービス 経営者や管理職、現場スタッフを対象に実践的な知識とノウハウを提供する。単なる知識提供ではなく、組織の行動変容につながる学びを重視するとしている。
DX・運営改善支援 PMS(プロパティ・マネジメント・システム)や各種システムの導入支援、情報共有体制の構築、業務標準化などを通じて、生産性向上と働きやすい現場づくりを支援する。
業者・専門家紹介支援 金融機関や行政、各種専門家とのネットワークを活用し、旅館経営に必要な最適なパートナーとの接続を支援する。
「次の世代が誇りを持って継ぎたくなる事業へ」企業理念に込めた思い

同社が掲げる企業理念は、「日本の文化・伝統を承継する旅館の未来を、次の世代へ引き継ぐ」だ。
「旅館は単なる宿泊施設ではなく、地域文化や風土、人々の暮らしや営みを受け継ぐ拠点です。私たちは、その価値を一時的な流行や場当たり的な改善で終わらせず、次の世代が誇りを持って継ぎたくなる事業へと進化させていきます」と同社は説明している。
「10〜35室規模の旅館が直面する人材不足、固定費高騰、情報格差、投資判断の難しさといった構造的課題に向き合い、実証済みの知見を業界全体へ循環させることで、良い宿が静かに姿を消していく現状を変えていきます」とも表明。「日本全国に、小さくても強く、地域に深く根差した唯一無二の宿を増やしていくこと。それが私たちの存在意義です」と位置づける。
代表・内田宗一郎氏のコメント全文
代表取締役の内田宗一郎氏は、同社設立の意図についてこう語っている。
「私たちが目指しているのは、宿を一時的に良くすることではありません。宿が自ら強くなり、次の世代へ自然に受け継がれていく状態をつくることです」
「旅館は地域文化や風土、人とのつながりが凝縮された日本独自の資産です。しかし多くの旅館が人材不足や固定費高騰、後継者問題などの課題に直面しています」
「私たちは現場で培ってきた知見を標準化し、再現可能な形で提供することで、全国に『小さくても強い宿』を増やしていきたいと考えています。その積み重ねが、日本の旅館文化を未来へ受け継ぐことにつながると信じています」
220年の歴史を持つ旅館の経営者として積み重ねてきた現場の知見を、業界全体へ還元する——。その強い意志が、コメントの随所ににじみ出ている。
役員陣と事業内容

役員陣には、代表取締役の内田宗一郎氏のほか、取締役として浅野道人氏、梶岡健吾氏、内田里絵氏の3名が名を連ねる。
事業内容は、地域商社事業、宿泊事業、飲食事業、EC事業、食品事業、FC事業、人材事業と多岐にわたる。
同社の公式ウェブサイトはhttps://ryokansoken.co.jp/にて公開されている。
設立母体「古屋旅館」について
旅館経営総合研究所の設立母体となった古屋旅館は、静岡県熱海市東海岸町5-24に所在する創業220年の老舗旅館だ。代表取締役社長は内田宗一郎氏が務める。
公式ウェブサイトはhttps://atami-furuya.co.jp、公式Instagramは https://www.instagram.com/furuyaryokan.official/ 。
旅館経営総合研究所の設立・事業開始は、この220年の歴史が育んだ「実証知」を、一軒の旅館の財産にとどめず、日本全国の旅館業界へと広く循環させていく取り組みの始まりといえる。




