宮崎氏(正式には崎はたつさき)
収益性を高める高付加価値観光への挑戦
訪日客の回復により日本の観光地が活況を呈する一方、観光の最前線ではオーバーツーリズムや深刻な人手不足といったキーワードを耳にすることが多くなっています。政府の観光戦略からも読み取れるように、いかに多くの人を集客するかという「数を追う」労働集約型のモデルは、もはや限界を迎えています。
この構造的課題から脱却し、地域が持続的に稼ぎ続けるためのキーワード。それは「1万円を払う100人ではなく、100万円を払う1人に選ばれる」という思い切った戦略転換です。
100人のチェックインや食事対応に追われる体制と、1組のVIPゲストに全リソースを集中させ最高のおもてなしを提供する体制。後者の方が現場の疲弊を劇的に減らしつつ、高い収益性を確保できるのは明白です。
では、どう「100万円の価値」を創るのか。それは単なる値上げではなく、価値の積み上げにあります。
訪日富裕層をターゲットにした、当社のジャパンチケットプレステージ事業が、現在、岐阜県の事業者さまと共に挑んでいる事例があります。通常5万~10万円の刀鍛冶体験を、ゼロを一つ増やした50万~100万円のコンテンツへと昇華させる取り組みです。単なる作業体験にとどめず、地域の歴史的背景への没入や職人との深い対話へと編み直しています。さらに、プライベートかつシームレスな移動体験を提供することは、ユーザーの満足度向上はもちろん、公共交通の混雑を回避し、地域住民の生活インフラとすみ分けることにも直結します。正しい方向で尖(とが)らせれば尖らせるほど、その土地でしか消費できない”持ち帰れない体験”となり、他と比べられない唯一無二の価値になるのです。
万人に好かれようとする安売り競争から降りることは、価値を正当に評価してくれる「真のファン」と深く結びつく決断です。「Low Volume(47) High Yield(少人数・高単価)」戦略のもと設定された対価は、文化の保全や職人の育成など、地域に還元されます。
日本の地域には、世界が憧れる真の価値がまだ数多く眠っています。その観光資源を決して安売りすることなく、適切なターゲットへ正当な価格で直接届けること。「100万円×1人」への挑戦は、観光産業を「稼げる、次世代が心から憧れる産業」へ変革するための、力強い原動力となります。共に手を取り合い、日本の観光の新たな基準を創り上げましょう。

宮崎氏(正式には崎はたつさき)




