JTB協定旅館ホテル連盟
JTB協定旅館ホテル連盟(JTB旅ホ連)は、2026年度事業計画の基本テーマを「JTBとの戦略的パートナーシップの深化による宿泊増売と会員施設の安定経営実現への貢献」とする方針だ。25年度に打ち出した基本テーマを基本的に引き継ぎつつ、「実現」の言葉を加え、強い意思を込めた。事業戦略は「宿泊増売」と「地域振興・観光振興」、事業基盤には「人財育成」と「組織強化」を施策の柱とする。JTBとの協業により宿泊増売の中長期目標2028年度の5千億円を念頭に、26年度は4500億円の達成を目指す。事業計画の案を基に取り組みの方向性を紹介する。
方針は「戦略的パートナシップの深化」
基本テーマを補完するサブテーマは、「『四方良し(お客さま・地域・JTB・旅ホ連会員)』の精神で、ツーリズム産業の持続的な発展を成し遂げる」とした。
JTB旅ホ連の「あるべき姿」には「四方良しの精神」のもと、「『7つの旅のチカラ(文化・交流・経済・健康・教育・環境・幸福)』を提供し、内外の実感価値を創出し続ける経済団体」を掲げた。
さらに「幸福創造産業」の確立を目指す。幸福創造産業を「宿泊業を通じて『7つの旅のチカラ』が持つ実感価値を創出し、訪れるお客さまに心が豊かになる時間(幸福感)を提供する産業」と定義づけ、その確立に向けて、JTBグループの事業ドメイン「交流創造事業」の源泉「つなぐ・つくる・つなげる」を推進する。
「四方良し」として「お客さま(ファン)」の満足度と評価を追求し、「地域(エリア)」の面での繁栄、「JTB(パートナー)」との共創・協業・共生、「旅ホ連会員(企業)」の安定経営・永続的発展の実現につなげる。
全国の52支部を中心に、7支部連合会、本部、そして企画、販売促進・情報、インバウンド、人財・組織強化の4委員会が事業戦略、事業基盤に基づく施策を推進する。
旅ホ連設立70周年の節目を踏まえ、旅ホ連の宮﨑光彦会長は「『共栄・相互理解・コミュニケーション』という設立の精神に通ずる『四方良しの精神』で、ツーリズム産業の持続的な発展を成し遂げたい。70周年を機に、全国52支部、3500会員を挙げて、JTBとの『戦略的パートナーシップの深化』をさらに推し進めていく」との方針を示している。
事業戦略の推進に当たっては、引き続き「JTBからの『新・4つのお願い』」を基に、旅ホ連会員に協力を求めていく。「新・4つのお願い」とは、(1)47DMC支店(法個仕個所)・各地仕入販売部との連携(2)行政(地域)にJTBが入り込むための力添え(3)地域のユニークな素材や取り組み情報の提供(4)オンライン説明会や旅先店頭での旅行相談への参画―となっている。
一方で、JTB旅ホ連が抱える課題を踏まえて、JTBグループに対する「旅ホ連からの『2つのお願い』」を初めて事業計画に盛り込むことにした。その内容は、(1)会員数拡大に向けた連携強化(仕入、47DMC支店)(2)JTB宿泊販売における旅ホ連会員施設シェアの維持拡大。この2点に協力を求め、宿泊増売に向けた相互連携により定率会費収入のアップを目指す。
事業戦略
宿泊増売:26年度は4500億円が目標
【1】宿泊増売
販売目標達成に向けた取り組み強化
JTBは、宿泊販売の26年度目標を4500億円に設定している。暫定3カ年目標では、27年度に4700億円、28年度に5千億円を達成することを目指している。
宮﨑会長は「旅ホ連の事業軸は『宿泊増売』『地域振興・観光振興』『人財育成』『組織強化』の四つの柱で構成されているが、第一義は『宿泊増売』だ」「今後も事業の第一義を宿泊増売とし、持続的に投資を行い、定率会費の拡大再生産の循環をつくっていく」と意欲を示し、会員施設に協力を呼び掛けている。
宿泊増売では、「令和の大改革」と位置付ける新たな国内客室管理ツールの最適運用により成果を出すことが求められる。23年12月にリリースされたこのツールは、柔軟な客室の出し入れが可能になり、宿泊プランに応じて最適なタイミング、最適な販売チャネル、最適な価格で市場に提供することを実現するために、旅ホ連会員施設の要望を反映させたシステム。
具体的には、国内客室管理ツール導入に伴う「JTBと旅ホ連の相互取り組み」に掲げる次の施策を実践する。
(1)「宿泊日から364日前」~「受注ピーク手前まで」の早期施策の効果的展開に向けた提供客室数の維持・拡大(休前日・特定期間を含めて全日、基本提供客室数の110%以上)
(2)JTB手配プランヘのマーケット・販売環境に応じた料金リバイスの徹底
(3)お客さまニーズに合致した高額・高品質な未提供客室の新規提供
(4)訪日インバウンド販売拡大に向けた早期販売施設率の向上(JAPANiCAN.comサイトにおけるHRプランまたは施設登録型プランの365日先販売中施設率70%以上)
(5)法人・団体販売に向けた提供客室の品ぞろえ・客室管理(減員時の戻入)
また、宿泊増売会議や、全国均一での仕入営業を強化するためにJTBが進めている仕入営業の「コンピテンシー化」(成功モデル化)と連携し、宿泊販売の目標達成を目指す。JTB担当者と支部による商談会「拡大キャラバン」、JTB、会員施設双方の若手同士の交流機会「コミュニケーションミーティング」などは26年度も開催する。会員数拡大と会員施設の宿泊販売最大化につながる仕入、販売の連動を促進していく。
◇訪日インバウンド
市場が拡大する訪日インバウンドに関しては、訪日外国人旅行者を対象とした宿泊増売に向けて、JTB、JTBグローバルマーケティング&トラベル、JTB Inbound Tripとの連携を強化する。
◇法人需要
法人需要の囲い込み、底上げの強化として、MICE・団体需要の獲得に向けたJTBの営業を支援する。
◇情報発信
リアルとデジタルを活用した情報発信、その環境整備を推進する。会員誌「旅ホ連ニュース」のコンテンツを充実させ、宿泊増売につながる情報の伝達に注力するほか、旅ホ連設立70周年を意識した情報の掲載で次代に向けた発展につなげる。会員用メールマガジン「旅ホ連だより」による発信も強化。JTB旅ホ連会員専用サイト「やどこむ」は段階的に改修を進める。
地域振興・観光振興:「幸福創造産業」へ進化
【2】地域振興・観光振興
旅ホ連の事業計画における地域振興・観光振興に関して、宮﨑会長は「宿泊業は、地域の文化と暮らしを守りながら雇用を創出し、地域経済に循環をもたらす役割を担っている。災害時には防災拠点にもなる」「単なる経済活動を超えて、宿泊産業、ツーリズム産業を『旅のチカラ』で、世界で最も人間らしい喜びを創造する『幸福創造産業』へと進化させたい」との考えを示している。
地域振興・観光振興には、国内外の旅行者を各地方に分散化させ、旅行市場を最大化する取り組みが求められている。JTB旅ホ連は、2026年3月、前年度に続き2回目となる「地域の観光開発事例視察」を香川県・小豆島で実施し、JTBの地域交流チームとの現地視察、意見交換会などを行った。観光客の分散化や平準化につながる取り組みを横展開できるよう、今後も継続的に事例視察を実施していく。
◇コンテンツ開発
JTBとの共創を通じて、誘客につながる着地コンテンツの開発支援を継続する。同時に、地域におけるサステナブルツーリズムの定着に向けた機会を創出。また、日本交通公社協定旅館連盟(現・JTB旅ホ連)の25周年記念事業とJTB創業70周年記念商品の位置付けで1981年に誕生した、全国各地で開催されるステージイベント「杜の賑い」に象徴されるような、JTBグループと地域との新たな共創事例の開発に取り組む。

旅ホ連の支部会員とJTBの営業社員による合同商談会「拡大キャラバン」(2025年12月)
◇エリアソリューション
JTBの地域交流チームとの連携で開発好事例を横展開し、地域における協働を促すほか、観光開発プロデューサーと会員施設のコミュニケーションを通じ、取り組みの最大化に貢献する。観光DXの推進では、旅の体験(旅マエ、旅ナカ、旅アト)が評価されるための質の向上も支援する。
◇復興支援
過去に発生した自然災害に対し、旅ホ連ではJTBグループと連携し、被災地の復興を支援した。今後も風評被害対策や反転攻勢の誘客に向けて主体的に取り組む。JTB、日本旅行業協会(JATA)との連携による正確な情報発信、JTBと連携した販促強化を実施するほか、地域の事情を考慮しながら被災地での研修や会議の設定などの支援を継続する。
事業基盤
人財育成:キャリアに沿ったカリキュラム
【3】人財育成
宿泊産業の課題について宮﨑会長は「一番の課題は人財だろう。人手不足を背景に、量的ならびに質的な人財の確保が課題だ」と語る。加えて、「会員施設は、外国人材の活用を含めて人財の確保に努めているが、厳しいのが賃金アップだ。また、事業承継の問題もある」と指摘する。
このためJTB旅ホ連では、人財育成を重視し、各種施策を展開する。
◇カリキュラム提供
旅ホ連では、宿泊業従事者のキャリアプランに沿ったメニュー、コンテンツの提供に注力していく。旅館経営人財育成アカデミー、関係機関との連携も強化する。
〈採用期〉人財確保への積極的な取り組み支援として、人財に関するソリューションやサービスの提供を多面的に行う。また、外国人雇用促進へのサポートを充実させる。
〈育成期~成長期〉多くの会員が活用できる育成プログラムの拡充、提供に向けて、宿泊業における階層別の研修を実施する。若手社員の自律意識醸成、実務スキルアップ、マネジメント強化、組織活性化、ホスピタリティ向上などを動画、オンラインセミナー、eラーニングなど、多くの会員が学べる教育機会として提供する。
〈活躍期〉次世代の経営者・組織運営職候補の人財育成支援として、経営力・マネジメント強化につなげる階層別研修を実施し、組織の活性化と社員間のコミュニケーション強化を支援する。次世代経営者向けに研修を実施し、経営力強化と会員間の連携につなげる。また、危機管理に関する教育素材をはじめ、大学講座や外部教育機関との連携により優れた教育素材を提供する。
〈離職防止〉従事者の定着化、離職防止につながる利用可能な制度の充実化と定着に向け、会員を対象とする福利厚生制度「旅ホ連共済」などの周知、利活用を進める。
◇事業発展、宿泊増売
旅ホ連会員の優れた取り組みを研修で学び、自施設や自地域の事業発展、生産性向上につなげる。JTBグループの事業戦略と連動したセミナーや宿泊増売につながる研修も実施。ツーリズム産業の発展に不可欠となるサステナブル意識の浸透に向けた啓発と発信も強化していく。
◇旅館経営人財育成アカデミー
旅館・ホテルの人財育成を支援する「旅館経営人財育成アカデミー」では、26年度も階層別研修を主に実施する。講師は、過去の研修後の参加者アンケートによる評価が高いパワーパートナー・アンド・トラスト代表取締役の安達太氏が務める。
26年度の研修(予定)は次の通り。
開催スケジュール(予定)は、オンライン5月14日(終了・マネジメント研修)▽千葉市5月20日(終了・コーチング研修)▽仙台市6月15日(若手社員研修)▽福島市6月16日(人を動かす幹部を育てる研修)▽盛岡市6月17日(同)▽那覇市7月2.3日(同)
◇日本の宿 おもてなし検定
2009年にスタートした日本の宿の接遇に関する業界資格である「日本の宿 おもてなし検定」は、おもてなし業務の品質を一定レベル以上に保つことにより接遇力向上を目的とする検定で、JTB旅ホ連が積極的に運用している。受験資格に年齢、国籍などの制限はなく、近年では外国人の受験者も増加しており、約16%を占める。
検定は3段階の設定。3級(基礎)は「基本レベル」、2級(応用)は「お客さまのご満足と明確なプラス評価をいただけるレベル」、1級(指導)は「おもてなしの知識・実務能力を発揮し、後輩を指導、育成できるレベル」。3級、2級はオンライン試験となるCBT方式で実施する。1級は1次審査が作文、2次審査が筆記、実技、面接試験となる。
25年度は、3級の受験者数が2167人、合格者数が1208人(合格率55.7%)。2級の受験者数が659人、合格者数が447人(同67.8%)。1級の受験者は23人で、実技や面接を含む最終試験に18人が進み、6人が合格した。2016年に始まった1級試験の累計合格者は37人。JTB旅ホ連では会員施設における1級資格の取得を後押ししている。
26年度は3級、2級の試験期間が9月16~30日。申し込み期間は7月1日からで、団体は9月3日締め切り、個人は9月10日締め切り。26年度の1級試験は6月に開催するが、申し込みはすでに終了。JTB旅ホ連では会員施設に対して受験料の補助を行っている。

2025年の「日本の宿 おもてなし検定」1級試験に旅館・ホテルのスタッフ6人が合格した(2025年10月、合格者らが観光庁の村田茂樹長官を表敬訪問)
組織強化:旅ホ連共済の認知拡大
【4】組織強化
組織強化に向けて、会員メリットの最大化につながる活動、情報提供を推進する。
◇旅ホ連共済
JTB旅ホ連共済の制度拡充と認知拡大に取り組む。旅ホ連加盟三大メリットの一つとして、1日10円で得ることができる「共に働く仲間たちの未来への投資=安心して働き続けることができる就業環境の構築」に、旅ホ連共済制度を通じて、会員施設の安定経営に貢献していく。JTB旅ホ連共済「ならでは」の有用性、優位性を周知し、26年度は、加入者2万2千人、「充実プラン」(プランB)加入者数3200人、加入率42%を目指す。
◇生産性向上
会員施設の安定経営につながるソリューションの提供、生産性向上の支援に向けて、次の取り組みを支援する。
・旅ホ連保険、外国人財雇用、食材プラットフォームなど、JTB旅連事業が提供する事業、サービスの活用を促進する。
・キャッシュレス決済などのデジタルサービスを手掛けるJTBビジネスイノベーターズ、人材サービスを担うJ&JヒューマンソリューションズなどのJTBグループ各社との連携を強化。「おてつたび」など、有効性の高い外部のソリューションの紹介と活用を促進する。
・人手不足対策(スポットワークの活用、外国人雇用)、労働生産性向上対策(DX活用事例の共有)などに関する情報提供や研修を拡充する。
・自然災害対応、カスタマーハラスメント対策など、危機管理意識の向上につながる情報整備と発信を強化する。
◇会員メリット
会員メリットを実感できる価値の醸成と、評価される交流機会の創出に継続的に取り組む。
若手・中堅社員層への交流機会の創出、支部間交流事業、コミュニケーション強化施策の支援をはじめ、会員メリットの告知を強化。外部のメディアとの連携による旅ホ連活動のアピールと組織価値向上につながる取り組みも強化する。




