夜にはちょうちんの明かりが川面に映り、幻想的な雰囲気を醸し出す
山深い集落の川沿いに、木造の建物が軒を連ねる洞川温泉(天川村)。軒先のちょうちんに火が灯った夜の雰囲気などで人気の温泉地だ。1300年前に役行者が大峯を開山した後、山伏や行者講の人の宿場町として栄えてきた。その中で約250年の歴史を紡いできたのが「あたらしや旅館」。木をふんだんに使った館内には70畳の大広間があり、今も毎年、行者たちを100人規模で迎え入れている。
同館の一番の売りは、1年を通して楽しめる「ぼたん鍋」。地元の猟師が捕らえた吉野大峯山系産の「大峯猪」を使用。オリジナルの味噌(みそ)仕立てのだしで味わう猪肉は、臭みなくやわらかと評判だ。締めには新感覚のチーズリゾットも選べる。冬場に1年分を仕込むかきもちも名物。お茶請けやお土産として喜ばれている。
そんな同館の5代目を務めるのは、茨城県出身の大西宏さん。縁あって同館でアルバイトとして働き始めたが、先代が病気に。宿を閉める話も出る中、歴史ある宿をなくすのはもったいないと事業承継を行い、21年に宿を引き継いだ。「当時無職でしたし(笑い)。洞川は散歩で出会う人がみんな知り合いというような土地で、居心地も良かったんです」と大西さんはひょうひょうと振り返る。最近は、廃校を使って養殖している地元の新名物「天川トラフグ」をいち早く宿で提供したり、移住者を探してきたりするなど、天川村を活気づけようと新たなことに取り組んでいる。
「行者さんは毎年同じ方が来ますし、それ以外のお客さまもおなじみさんがほとんど。宿を楽しくやらせてもらっています」と語る大西さん。移住者である大西さんが洞川にどんな新しい風を送り込み続けるのか、今後も目が離せない。
【9室、1泊2食税込み1万6800円から】

夜にはちょうちんの明かりが川面に映り、幻想的な雰囲気を醸し出す




