【体験型観光が日本を変える438】藤澤安良 気になる日本人の観光動向 藤澤安良


 4月というのに天気予報では夏日や真夏日という言葉が飛び交っている。そんな時、桜の満開を求めて京都に行った。遅咲きの御室仁和寺の桜が満開であった。多くのお客が詰めかけていた。みんなよく情報収集しているものだと感心してしまう。

 次の日は春の嵐となり、風雨が強くて出かけられないような状況になった。寺の境内や宝物館なら大丈夫だと思い、世界遺産の奈良法隆寺へ向かった。観光客がとても少ない中でも、インバウンド団体のツアーバスが来ていた。

 次の日は晴れて初夏の気候。例年なら最高の見頃であるはずのこの日、今年は1週間以上早い開花であったことは承知していたが、奥千本が満開との前日情報により吉野山に向かった。近鉄電車も吉野山ケーブルも参道も、土曜日ということもあって大混雑である。中千本へ向かうバスも長い列になっている。

 いつもなら桜が残っているはずの上千本や奥千本も、前日の風雨で散っているとのアナウンスがある中、上千本から奥千本行きのバスは3時間待ちとのこと。「せっかく来たのだから」と思うのだろう、長蛇の列が続く。さすがに東京に帰る予定なので奥千本は諦めて帰ることにした。ピンクが若葉色に変わった葉桜見物になったが、それはそれで美しい光景であった。

 奈良市内の桜の名所に向かおうと、ネット、駅の観光案内所、タクシーの運転手から情報を得るが、これらの情報が微妙に違うのが気になる。タクシーの運転手は「もう散ってしまっている」と言うが、とにかくそこへ行ってくれと言うと、散りかけてはいたが、8割ぐらい花がついていた。行ってよかったと思うぐらいである。

 運転手は誰かがネットに上げている情報を参考にして言い、それをもとに客が動いている。誰かとは誰なのか。直近の情報ではないことも多く、現場との齟齬(そご)がそこに生まれる。毎日朝の定点観測による情報が一斉に伝わることが望ましい。観光情報まで情報源が誰だか分からないネットに頼るとは情けない話である。

 前週は四国にいたが、山々は桜というより新緑である。昨秋の環境が竹やぶを金色に光らせている。「こんな田舎まで」と思うところに、多くはないがインバウンドの個人・グループ客が来ている。その後、移動した広島は新幹線駅から市内を走る広島電鉄の中まで半分ぐらいがインバウンドである。前述の京都・奈良は、大きな荷物を持ったインバウンド客が新幹線のコンコースやホームにさらに多くいる。まるで日本ではないような様相である。

 中東が混乱している中でも、日本への渡航が人気であることは、この状況を見ても明らかである。ただ日本人にとっては、賃上げが進んではいるが、それに勝る物価高のイメージ、連日報道されるホルムズ海峡と原油高の話題、1ドル160円前後で推移する円安と、旅行を取り巻く状況が芳しくない。

 観光産業に関わる人や組織は、政府、行政とともに、旅行へのモチベーションを上げるような、そして起爆剤になるような知恵を出し、策を講じる必要性に迫られている。

 
 
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