スーパーやコンビニでおなじみのセルフレジ。宿泊施設では無人のチェックインやチェックアウトが増えているし、空港でもスマホのQRコードを使った搭乗手続きの無人化が進んでいる。機内預かり荷物も利用者が自分で手続きをする。とはいっても、まだ不慣れな利用者も多く、こうした無人機の近くには担当者がいて戸惑う人たちを懇切丁寧に助けてくれる。
3月の半ばにイタリアを旅した。往復航空券とホテルの宿泊は全て予約サイトで済ませた。予約が完了するとメールが送られてきてひとまず安心。ここまでは日本語で、できた。
イタリア5泊目。世界の名車、フェラーリを産んだ町、モデナに到着し、ホテルに泊まろうとして大変な目にあった。鉄道の駅からホテルを目指して歩いた。そのホテルは看板もなく、他の住民も住んでいる建物で、数フロアをホテルとして利用している。建物の正面には、映画で見るようないくつもの呼鈴が並ぶブースがあった。それを押しても何の反応もない。
イタリア在住5年で、イタリア語に堪能な友人と一緒だったので、彼が電話で問い合わせてみた。すると、数日前にチェックイン方法をメールしたという。それをわれわれ2人が見落としていたわけだ。
メールを探し出し、氏名、年齢、国籍、パスポート番号などを記入し、さらにパスポートの顔写真のページをスマホで撮影し添付して返信した。これで登録完了。数分後、ホテルへの入室方法が送られてきた。係の従業員くらいはいるだろうとの予想が甘かった。受付もなければ担当者もいない。文字通りの無人チェックインだった。
送られてきたメールには三つのボタンがあった。まず、建物正面の歩道に面したドアを開けるボタンを押す。次に客室がある階のドアを開けるボタンを押す。ここからがホテルエリアだ。最後に自分の部屋の鍵を解除するボタンを押して入室できた。
ここまで来るのに電話での問い合わせ、メールの必要事項記入と返信から2時間以上かかった。まさに”突破”という言い方がぴったりだ。客室は奇麗で快適、値段も納得いくものだった。慣れれば簡単なのだろうが、個人旅行で言葉が不自由な海外を巡る場合の怖さのようなものを感じた。英語で通りかかりの人に尋ねてもラチがあかない。イタリア語に不自由しない友人がいなければお手上げだった。
日が暮れ始め、休憩中のレストランやカフェに明かりがともるころ、友人がイタリア語で問い合わせするのを、なす術なく待っていたのはなんとも心細いひとときで、他のホテルを探そうかとさえ考えた。
旅はトラベル=トラブルとも耳にする。今回のホテル騒動はトラブルとも言えないかもしれないが、筆者にはトラブルだった。ここ10年くらい、海外パッケージ旅行は利用したことはなかった。自分で航空機とホテルを予約し、見所を調べ、歩き回るのを常とした。それで何とかなってきた。しかし、今回はイタリア在住の友人がいたので油断があったのかもしれない。もし、家族と一緒だったら、元旅行雑誌の編集長の面目丸つぶれだった。旅先でお客さまの困りごとなどを解決すべく奔走する添乗員の苦労がしのばれた。
(日本旅行作家協会常任理事、元旅行読売出版社社長)




