広島電鉄循環線は、広島市中心部を一周する路面電車の新路線で、3月28日に開業しました。日本の路面電車の環状系統としては、16年にループ化した札幌市電に続く2例目です。
開業2日目に乗車してみました。やってきたのは「被爆電車」として知られる650系電車。広島電鉄を象徴する歴史的な車両です。
乗車すると、座席が埋まる程度の混み具合。客の多くは開業に駆けつけた「試し乗り勢」と見受けられ、地元の利用者とおぼしき人は限られていました。
循環線の運転本数はきわめて少なく、平日は25分間隔で各15本の運行、土休日は45分間隔で各8本の運行です。平日は2車両、土休日は1車両で回せる運行規模です。また、平日・土休日ともに10時から16時の日中時間帯のみの設定で、朝夕のラッシュ時の運行はありません。
政令指定都市の中心部を走る路面電車の運行本数が、これだけ限られているのは驚かされます。その理由は、循環線を新設するに至った経緯にあります。
循環線は、昨夏の駅前大橋ルートの開通によって、当初は廃止が検討されていた一部区間を、地域住民に配慮して維持するために設定されました。つまり、需要があるから作ったのではなく、メインルートから外れた停留所の救済が目的です。そのため、そもそも多くの利用者を見込んでおらず、限られた運行本数となっているのです。
そんな循環線を、広島電鉄では観光路線として活用していくようです。その方法のひとつが、観光客に人気のあるレトロ車両による運行でしょう。筆者が乗車した日は、内回り、外回りとも被爆電車で運用していて、被爆電車同士のすれ違いもみられました。
被爆電車は、これまでも通勤時間帯などに運用されてきましたが、観光客が「狙って乗る」のは簡単ではありませんでした。しかし、土休日の循環線にもっぱら被爆電車を用いれば、時刻表を確認することで容易に乗れるようになります。
実際、広島電鉄は、循環線をレトロ車両中心で運用する方針のようです。使用車両も事前にウェブサイトで公表する予定とのこと。循環線を「歴史を感じられる路線」として位置づけ、観光資源として育てていくのでしょう。
新たな系統が、広島市のシンボルとなるような路線に成長することを期待したいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)




