【VOICE】観光教育がもたらすもの 流通科学大学人間社会学部観光学科 教授 西村典芳 氏


リカレントによる従業員の育成が急務

 観光業界においては、10月以降の急激な需要回復に伴い、コロナ禍前以上に人手不足が深刻化している。人手不足の対応策として、DX化による生産性向上が注目されているが、DXと並行して、リカレントによる従業員の育成も急務であると考える。

 インバウンド・観光専門の求人サイト「やまとごころキャリア」に登録している求職者2万5千名(2022年12月)に対してリカレント教育に関する意識調査によると、リカレント教育の受講を希望すると回答した方が71.6%、一方で、リカレント教育に参加したことがあると回答した方は50.5%となっており、受講希望者数と受講経験者数とのギャップが21.1%ある。年代別では、現役世代(20代~50代)では年齢が上がるごとに学び直しのニーズが高くなっている。実際にはリカレント教育による学び直しを必要としているが、受講する環境が整っていないことが考えられる。

 特に、身に付けたい知識・技能の中で「観光地・観光地域づくりに関する知識」が最もニーズが高かったことからも分かる通り、発地型から着地型への旅行形態の変化に対応するためには、従来の旅行会社での知識や経験だけでは対応しきれず、リカレント教育による学び直しが必要とされている。また、旅行業経験者以上に宿泊業経験者の「観光地・観光地域づくりに関する知識」のニーズが高いことから、宿泊業においても従来の旅館やリゾートのような施設内で完結する旅行形態ではなく、エリアが一体となった観光地域づくりが求められており、それに対応するための学び直しが必要とされている。そこで、立命館大学ビジネススクールの日本初「観光MBA(観光経営学修士)」(2024年4月設置構想中)に期待したい。

 一方で、新卒者がいかに観光業界へ就職するか?が課題である。本学では毎年2月に「キャリアアップセミナー」ホテル・旅館コースと観光振興・地域創生コースの2コースを開講している。観光関連企業・団体・旅館ホテル経営者をお招きして学び、フィールドワークで現場に出かけキャリア意識の向上を目指したものである。職業観の育成や、自己の将来に夢や希望を抱き、その実現を目指す意欲の高揚を図る教育は、これまでも行われてきたところであるが、より一層重要になってきている。キャリアアップセミナーは、こうした課題の解決に向けて、体験を重視した教育の改善・充実を図る取り組みの一環として役割を担うものであり、学生と現場の橋渡しになれればと期待している。

 

 
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