田中氏
確保から定着、学び直しまで 業界と共創する人材育成へ
――大和学園について伺いたい。
1931年の『鮒鶴料理講習会』を源流に創立した。『大和学園』という名称は、建学の精神『人の和の広がりを大きくし、もって人類の福祉増進に寄与する』に由来する。『京都調理師』『京都ホテル観光ブライダル』など四つの専門学校を中核に、クッキングスクールなどでの生涯学習事業、産業支援センターの運営などの三つの事業を展開している。在学者数は約1500人、卒業生は累計5万人を数え、京都を中心に全国の名門ホテル・旅館、京料理の名店などで活躍している。
現在、『リンク』『グローバル』『DX』の三つの軸を強化している。DXについては、コロナ禍を機に動画教材の作成を始めた。その後VR教材にも着手し、現在では約70コンテンツをそろえている。すしの握り方やホテリエ向け各種マナーなどが学べるものだ。生成AIによるレシピ開発支援やスマートグラスを使った遠隔指導なども実践し、教育の質向上に努めている。
グローバルについては、留学生を対象にした国際ビジネス科も近年大変人気で、日本人と留学生が在学中に交流できる仕組みができつつある。
――リカレント教育にも取り組まれている。
20年から講座を運営している。京都府市や京都大学経営管理大学院、立命館大学や、地域の旅館ホテルなどと連携した評価体制であるのが特長だ。観光、調理、製菓合わせて約750人が受講した。中心は『京都観光ホスピタリティ入門』などの観光分野で、約640人が受講した。受講者は、観光事業従事者はもちろん、開業やキャリアチェンジを目指す人など幅広い。
――複数の自治体と連携協定も結んでいる。狙いは。
リンクにあたる自治体との包括連携協定は2013年に京都府宮津市と締結したのが始まりだ。コロナ禍以降連携を加速させ、22年に京都市、24年には京都府と、『食』や観光人材育成を軸とした包括連携を結んだ。今年5月には京都府外の自治体としては初めて、鹿児島県と協定を結んだ。
狙いは、地域と共に課題解決を図る『共創・伴走支援』だ。京都で培った食・ホスピタリティの知見と各地域の資源を掛け合わせ、人材育成、商品開発、観光振興につなげる基本姿勢は、どの地域についても同じだ。
――近年の学生募集の状況、動向はどうか。
学園全体での学生数はほぼ横ばいだが、少子化を肌で感じている。また京都は大学進学率が毎年7割を超えるなど、大学進学志向が強い土地であるため、専門学校として強い危機感を持っている。ただし、近年の傾向として、就職と資格取得の実績、実践重視に加え、『人と向き合う仕事』への回帰が見られる。また日本料理や観光の中心地、先進地としての京都の、専門教育の学びの場としての求心力、価値の高さも実感している。
――観光人材の現状をどう捉えているか。
年初に京都市内の観光関係者を前にお話しする機会があり、『10年後、今と同じサービスを提供する自信がありますか』との問いを投げかけた。少子化により全国、全業界で人材の奪い合いが始まっている中で、ホスピタリティ産業を誰がどのようにして支え続けるのかは業界全体の課題だ。
コロナ禍の影響などから観光・宿泊業の魅力が子どもたちに伝わっていないと感じており、業界の皆さんと観光業の魅力を伝える取り組みを行いたいと考えている。すでに調理業界については、京都の著名料亭の若主人と教員による対談を掲載した中高生向けの冊子を作り、魅力発信を始めた。
地道な取り組みではあるが観光業でも同様の取り組みができると考えている。魅力発信と併せて、今観光業で働いている人たちの待遇やキャリアパスを明確にして示すことも、働き方改革などが進む中で重要になってくるだろう。
宿泊業については、人材確保に加え人材の定着も深刻な経営課題とされている。だからこそ『人の和を大きくする』教育機関として、採用から育成、定着、学び直しまでを一気通貫で、業界と共創していきたい。

田中氏
田中 幹人氏(たなか・みきと)大学卒業後、大手ICT企業を経て2013年大和学園に入職。21年副理事長に就くとともに、京都調理師、京都製菓製パン技術、京都ホテル観光ブライダルの3専門学校の校長に就任。今年4月から現職。京都大学経営管理大学院修了。京都府出身、40歳。
【聞き手・小林茉莉】




