【道標 経営のヒント 256】ワーケーションと地域活性化 佐々山建築設計社長 佐々山 茂


 環境省は国立・国定公園や温泉地でのワーケーションを地域活性化の一環に位置付けています。10月2日に環境省、第2回チーム新・湯治全国大会が、6日には国際観光施設協会主催の「ワーケーションシンポジウム~宿泊施設のこれからを考える~」がWebで開催され、いずれも環境省自然環境局が参加されました。

 ワーケーションは個人型と企業型の二つに分かれ、個人型は自宅でのテレワークの延長で生活圏を離れ、温泉地などで通常業務を行い、アフター5や週末を休暇として過ごし、企業としては労務規則の検討が必要と思います。

 企業型は豊かな自然環境の中でイノベーション創出などの目的をもって業務を行う活動です。

 受け入れ側としては昨年11月に設立されたワーケーション自治体協議会(1道13県98市町村が参加)などがあり、地域活性化に期待を持っています。

 テレワークは時間や場所を有効に活用できる働き方で、人口減少社会に対応し、地域活性化へ寄与する働き方改革の一環ですが、コロナ禍で一気に広がりました。そして人々が過度な都市化に気付き、都市から地方に人の流れが変わり、ワーケーションが注目されました。

 最近、私も旅館の設計で(1)食の提供システムのカイゼン(団体から個人型へ転換し生産性を向上し、食を地域と分かち合う)(2)滞在客の居場所を創る(目的を限定しない無目的な場の提供)(3)景観、地域文化という資本財を生かす(何もしなくても、居ることに価値ある空間)の三つに気を配っていて、第2回チーム新・湯治全国大会で「温泉旅館、ワーケーションの事例」として紹介しました。

 8月はお客が戻り、客室の稼働が前年並みになった旅館でも、利用人員は前年比80%に達せず、今後は1室2名が進むと思います。延べ床面積を客室数で割ると中央値が160平方メートルになるのは、10帖客室5名定員の頃に1人当たり30平方メートルで計画した名残です。1室2名になると1人当たり80平方メートルとなり、その面積を有効に使う方法を考えなければなりませんが、ワーケーションなどの新しい需要を生みだし、地方に向く人の流れを滞在型で受け止める仕組みづくりが必要でしょう。

 地域の景観、文化、人情はそれぞれで、宿泊産業も多様化することで魅力がアップし、それぞれの地域の活性化につながると思います。

 商業資本のディズニーランドと住民がつくり上げた街、例えば横浜中華街の魅力は質の違い以上のものがあると思います。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒