【道標 経営のヒント 191】館内案内サインと高齢客 タグ広告プランナー 宮坂登


 首都圏には新しいホテルが次々と誕生しており、例えば館内案内サインも斬新なスタイルのものを見ることができる。最新ホテルを1日かけて行脚するだけで勉強になるし、今後への参考にもなる。

 その一方、高齢客を多く集める老舗宿のサインは見直しの時期にある気がする。

 サイン盤そのものの老朽化の問題もあるが、それだけではない。案内サインを前にしても「文字が小さくて読みづらい」、あるいは「今、館内のどこにいるのか分からない」というクレームが増えているという。取り付けた当時は問題がなかったものの、客層の高齢化に伴う視力や方向感覚、姿勢などの衰えがそうさせているようだ。

 取引先からそんな相談を受けて、先頃その宿を訪れた。数年前に館内サインを増強していたこともあって、「案内」という目的は十分に果たしているものと思っていた。しかし、高齢客の目線で眺めながら改めて見て回ると、確かにいろいろなことが浮き彫りになる。

 腰の曲がったお客さまや車椅子のお客さまには見えない位置に取り付けられたサイン。その建物内にある施設が一覧になっているのに、文字が小さく、見えづらいというより高齢者の目には可読困難なサイン。どの方向に向かって歩いたらその先に何があるのか、施設自体が大きかったり、複雑な造りであればあるほどサイン表示の難度は増す。

 その宿では「風呂や食事処まで、廊下にずっと線を引いてほしい」などという要望も受けたそうだ。高齢客の気持ちも分かるが、サイン重視で考えてそんなふうにしてしまったら、館内の雰囲気が台無しになってしまう。

 空間に違和感なく溶け込みながら、誰が見ても分かるもの。それがサインの基本だが、高齢客の現状にはマッチしなくなってきている。きっとそんなふうに感じている宿が多いのではないか。

 一般的に高齢者の可処分所得は減少傾向にあるものの、宿のボリュームゾーンはやはり高齢客。宿の社長さんによれば、来ていただくのは大変うれしいものの、館内で迷子になることが多くなっており、その対応でてんやわんやの状況だそうだ。

 人材不足という面でも苦慮する中、これではおもてなしどころの騒ぎではない。心して取り組まなければならない、と、神妙な面持ちで悩みを聞いて帰ってきた。

 今、その命題に向けてあれこれと策を練っている。最近は、館内のムードを損ねないために案内サインの数を減らす傾向が強いが、こと高齢客に分かりやすいサインとするためには、過剰と思えるサインにすることはやむを得ない気もしている。

 
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