「ななつ星in九州」でこれまでに最も多くの食材が使われた産地はどこかご存じだろうか。
それは大分県佐伯(さいき)市である。宮崎県と県境を接し、リアス海岸の豊かな漁場はじめ、山間部の栗、シイタケ、平地の野菜など農産品にも恵まれた地域である。同産地から、主食の米をはじめ17種類もの食材・産品が採用され、コース変更となり、佐伯駅に停車しなくなった現在も、使われ続けている食材がある。
食材・産品を選定するために、料理長が直接産地、生産者を訪ねることは前述したが、ななつ星が停車する駅では、水や食材などの補給のため、料理長たちがホームに降りる。実はそのホームがななつ星と地域・産地との重要な接点となっているのである。
ななつ星は佐伯駅に毎週日曜日の朝、約1時間停車した(2022年10月~2026年3月まで、1泊2日コース)。お客さまが観光にでかけている間、自治体職員と料理長は、使用中の食材の感想や今後の要望、新食材のサンプルを持参し提案を行うなど、駅ホームが重要な商談の場となっていた。前週提案した食材に対する感想を、翌週には直接聴くことができる。料理長が好感触を持った食材の生産者との間を自治体がつなぐ。旬の食材を季節ごとに提案することができるのである。
自治体や観光協会職員は、毎週ななつ星の停車時、お客さまを駅ホームでお迎えし、おもてなしする。自治体は観光課だけでなく、農政課、水産課、ブランド推進課、地域振興課、秘書広報課など各課が連携協力して、おもてなし体制を組んでいる。課を超えた協力体制と意思疎通が図られていることが、ななつ星での食材・産品の採用につながっていると感じている。
先日、新しい食材探しのため、料理長と九州のある自治体を訪ねた。「これから来る!」と感じた自治体とはどこか。また機会があるときにお伝えできればと思う。
(九州産業大学地域共創学部教授 永松毅文)




