【道標 経営のヒント85】小宿でも独自の魅力を 池田千博


 今までは宿のオーナーさんの意向を直接受けて、気持ちをひとつに新しい宿を模索し続けてきたが、近年は新たな着想を得るためにスタッフの方々の意見も伺うようにしている。

 また、高品質ブランドのアイデンティティや同一水準のクオリティを重要視する世界的ホテルブランドや大手不動産会社のような組織を相手にすることも多くなった。少々勝手が違うが、これも時代の大勢なのだと思う。

 宿の多くは先代が残した負債を子どもが返している状況である。何とか応援したいという気持ちが先立ってしまう。土地の力を借りながらも、お客さまに喜んでいただける魅力的な施設にするためにあれこれと悩みながら設計に向かっている。

 日々、さまざまな相談が持ち込まれるが、日本が誇る大切な文化である温泉をお持ちの宿には、その魅力を最大限に生かすために温泉大浴場のグレードアップを最重要課題としてご提案している。

 日本に進出してきている外資系ホテルでさえも温泉の魅力を高く評価し、世界初の温泉大浴場を造ったり、客室温泉露天風呂を日本的なもてなしとして取り込んでいる時代だからである。

 また近年、人材不足が大きな問題になっているが、その解消策のひとつとしてダイニングをリニューアルしたいという要望も増えてきている。バイキングスタイルの料飲サービスがほとんどなかった北陸地方の宿からも、朝食のみならず、夕食もバイキングを楽しめる施設にしたいという要望があった。

 こうしたリニューアル工事の結果、お客さまアンケートの評価がグンと上がると設計冥利に尽きる。おのずとマスコミの注目度も上がり、集客面での好循環が続く。

 また、小さな改修を積み重ねていく中で、短期間のうちに経営状態まで好転してしまう宿も何度もみてきた。ニーズは作るもの、また作ることが可能なものだと改めて思う。

 業界は激変の様相を呈している。特に小さな宿でも独自の魅力を見つけ、打ち出していかなくてはならないと思う。

 視点を変えれば、今の時代だからこそ宿のカラーが打ち出しやすいのではないかとも考えている。旅館でも思い切ってホテルのようなサービスを考えるのもいい。今後も競争力を持った宿にするための努力はいとわないつもりでいる。そのためのさまざまな具体例や実績例、ノウハウを弊社の公式サイト内「知恵の方舟」に掲出してあるので、じっくりと眺めて参考にしていただきたい。

 今号でこのコラムを卒業することになった。2年間のご愛読に、深く感謝を申し上げたい。

(談)

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