●会席料理
懐石と同じ読み方をすることから間違いやすいのですが、懐石料理とは全く異なります。江戸時代の中期ごろから酒席向きの料理として発達したもので、現在でも冠婚葬祭後のおもてなしや、会食などのさまざまな場面で最も多く利用されています。本膳料理や懐石料理のような厳格な決まりや作法はなく、お酒や料理を楽しむことそのものが目的です。
会席料理には大きく分けて二つあります。一品ずつ食べ終わるごとに出される「食い切り料理」と、ある程度の料理をあらかじめ並べておく「宴会料理」です。
「食い切り料理」はその場で食べ切ることを前提に、食事の進み具合に応じてできたてを出すものです。一方、「宴会料理」は、現在、全国の旅館・ホテル、日本料理店で行われている様式の料理と思えばいいでしょう。出される料理の品数や順番は店ごとで異なります。また、郷土料理を取り入れたり、ウナギや鍋物など専門料理を組み込んだりと、旅館・ホテルごとに特徴のある献立にすることが多いようです。
●精進料理
鎌倉時代、禅宗が栄えた時代に始まったもので、肉や魚などの動物性タンパク質を禁じたことによって生まれた料理です。道元禅師や栄西禅師が中国より持ち帰ったとされます。もともとは寺院の中でだけ食され、修行僧の食事として発達しました。それが禅宗の普及とともに、一般の料理様式として確立していったのです。
大豆や、大豆から作られた豆腐や湯葉、野菜類、海藻類、ゴマ、米などの穀物など、植物性食品で構成されています。ただし、野菜でも、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、ショウガなどのにおいの強いものは使うことが禁じられています。
精進料理は粗食であるとはいえ、温かい物は温かいうちに出し、また、限りある食材を無駄なく使い切る知恵をこらしていることから、その他の日本料理にも大きな影響を与えています。最近では、外国人のベジタリアンの間からも、関心を持たれています。
ぜいたくを戒めるため、器は陶磁器を使わず、黒か朱色の漆器を用います。