【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 542】ポストコロナ時代のM&A戦略1 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 新型コロナウイルスの流行は旅館・ホテルの運営のあり方だけではなく、M&A取引(合併・買収)にも大きな影響を与えている。業界の先行き不透明感や資金繰り問題から売却を急ぐオーナーが増えている一方で、コロナ禍による混乱を商機と捉えて積極的に買収を仕掛ける資本家もいる。今回コラムでは、最新の情勢を踏まえながら、ポストコロナ時代のM&A戦略について説明したい。

 1、持ち込み案件に注意する

 面識のない第三者や仲介会社からM&Aの売り込みがあった場合には、物件の内容をよく精査して提示条件を丸呑みしないよう注意したい。そもそも平時であっても優良な施設は身内や限られたルートで買い手が決まるものである。入札案件を除き、幅広い買い手候補者を対象とした出回り物件は何らかの問題を抱えていることが多い。コロナ禍で銀行融資も厳しくなり、不良物件が放出されている。悪質な業者にだまされないよう慧眼(けいがん)を養いたい。

 一見安くて得に見える施設は、固定資産税を滞納していたり、休業期間が長かったり、設備改修に莫大な費用がかかったり、収益を生み出しにくいレイアウトになっていたり、耐震基準を満たしていなかったり、人口減少により顧客獲得や従業員確保が困難な地域だったりなど問題を抱えていることが多い。売主が低価格で販売せざるを得なかった理由を探り、解決可能か吟味した上で購入の可否を判断したい。

 問題を抱える施設でも高価格で提示されることがある。前オーナーが高値つかみをしたケースだ。ローンで購入しており、損切りできないため割高な価格設定となってしまう。

 もともと旅館・ホテルの運営経験や能力のない投資家が地方の古い施設を買収したものの営業再開することができず、次の買い手を探しているという話はよく聞く。所有権移転登記の多い物件は注意したい。

 コロナ流行前は異常とも思える熱気で宿泊施設が売買された。特に人気だったのが数億円以下の物件だ。都市部の町屋を改装した民泊施設や地方の小規模施設、廃業した中型施設がこれに当てはまる。財テクの対象になっていなかったかどうか過去の取引経緯を調べておきたい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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