アメリカの国立公園には何度も行っていて、有名なところではグランドキャニオンに5度、イエローストーンに3度訪れている。有名な公園では自家用車1台につき35ドル程度がゲートで徴収され、ビジターセンターの維持や自然保護官(レンジャー)配置の財源に用いられてきた。
複数の公園に行く予定であれば、年間パス(80ドル)がお得であったが、本年1月から料金体系が大きく変わった。グランドキャニオンやイエローストーンなど観光客の多い11の国立公園では、16歳以上の米国非居住者1人あたり100ドルの追加料金が課され、年間パスも250ドルに値上げされた。日本からの観光客にとっては、円安とのダブルパンチである。
ひるがえって日本の国立公園や景勝地は、多くが原則「無料」であった。美術館など「建物」への入館料には納得できても、ただそこにある「自然」を楽しむためだけにお金を払う文化は、日本ではなじみが薄い。人工物の管理コストは可視化されやすいが、自然景観や安全対策のコストは目につきにくい。
だが、この常識がいま、大きな転換期を迎えている。富士山の山梨県側における通行料の義務化をはじめ、各地で財源確保の動きが本格化している。環境省が今年3月に「国立公園における利用者負担制度導入のためのガイドライン」を策定したのも、施設の老朽化や維持管理費用の増大、自然環境への負荷の高まりなど、各地で共通する課題に対応するためである。さらに、インバウンドをめぐる「二重価格」の是非も、各所で議論が百出している。
だからこそ今、受け入れ側に問われているのは「いくら、どう集めるか」という手段の議論ではない。アメリカのようなドラスティックな選別が良いとは限らない。しかし、ただ景色を消費させる「無料の観光」から脱却し、旅行者を地域の価値を守るパートナーとして迎える覚悟と、誰もが納得できる透明性の高い仕組みの設計こそが、これからの日本の観光地の本質的な競争力を左右するのではないだろうか。
(専修大学経営学部教授 佐藤暢)




