【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 540】コロナを考慮した事業計画10 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回コラムに引き続き、新型コロナの影響が続く中で銀行向けの事業計画を策定する方法を紹介しよう。お盆休みの週は多忙を極めた旅館・ホテルが多かったが、夏休み以降の業績見通しが立たないという声も聞く。継続的な資金繰り支援を受けられるよう万全な対応をしたい。

 9、新型コロナで弱体化した組織体制を立て直す

 春先から休業や低稼働が長期化したことによって多くの人材が旅館・ホテル業界を去ることになった。

 Go Toトラベルによる現場の混乱は、事務手続きの煩雑さだけではなく、フロントや予約スタッフの欠員により急増する宿泊需要に対応しきれていないことも大きな原因の一つだろう。今後さらに宿泊需要が回復していくと、売り上げアップの足かせになりかねない。今のうちから新型コロナに伴う退職により弱体化した組織体制の立て直しを行おう。

 新しいスタッフを迎える前にやっておきたいのが、作業手順書の作成や見直しである。作業手順書とは、担当シフトごとに出勤から退勤までの作業項目や具体的な作業内容、所要時間をまとめた表である。例えば、午前フロントでは、ナイトからの引き継ぎ、鍵の授受から始まって、引き継ぎ表確認、タクシー管理表確認、フロントカウンターのセッティング―というように時間の流れでリスト化していく。

 具体的な作業のポイントや留意点を項目ごとに整理しておくと良い。所要時間は分刻みで設定し、固定作業と変動作業に分けておく。固定作業は稼働に関係なく発生するもので、日締めや各種報告などがそれに当たる。変動作業は稼働に連動して増減するもので、客室清掃やチェックイン、朝食提供などが当たる。

 作業手順書を稼働率の水準に応じて標準的なものを作成することによって、各シフトの必要人数を割り出すことができる。また、スタッフごとの作業割り当てを効率的に行うことができる。

 歴史ある施設はシフト作成を感覚的に行っているケースがある。今回を機に作業手順書の見直しを行えばスタッフの習熟度アップや効率化につながるだろう。当面の間は稼働が不安定な状況が続くと想定される。宿泊者数と投入労働時間が連動するよう、きめ細かい作業割り当てを行い、人時売上高を意識した運営を行いたい。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 
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