【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 460】事業承継と親子関係3 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、親子の性格や関係を例示しながら、事業承継を円滑に進めるコツを紹介しよう。親族内承継だから円滑な意思疎通が図れるかというとそうではない。血のつながった親子であるがゆえの葛藤が旅館・ホテルの運営に影響をもたらすことがある。

 5、親子の本意でない事業承継

 後継者選びは理想通りに進むわけではない。経営能力が期待される子が都会に勤めに出て、家業に前向きでなかった子が継ぐことがある。次期社長として期待されていた子が不幸にも急逝し、別の子が不本意にも継ぐことがある。

 このようなケースでは、承継したからといって子に全てを任せるのではなく、親も一定程度経営に関わり続けることをお勧めする。旅館・ホテルの経営は理屈や奇麗事ではうまくいかない。社会経験が浅いと取引先や従業員にだまされることがある。

 時には事業継続が困難になるほどの損失を被ることがあるので注意が必要だ。いい年になったから大丈夫だろうと過信せずに、経営者として必要な能力・経験を養ってきたか冷静に判断して、段階を経て任せていくと良いだろう。

 6、親が業績不振の原因を作った館の事業承継

 親の経営判断ミスにより業績不振に陥った館を子が承継することは珍しくない。親によっては自分が引き起こした問題だからと、承継後も経営に口出しを続けることがあるが、望ましいことではない。業績悪化の原因を作った当事者が経営に関与し続けることが問題解決の妨げになっている可能性があるからだ。

 このようなケースでは、経営は子に全て任せた方が良い。子から頼まれたことだけ積極的に協力することをお勧めする。その上で、業績悪化の原因は全て自分にあるので身を退くが、必要なバックアップは行うという姿勢を社内外に示すと子は経営しやすくなるだろう。

 子は自分が借りたお金でないにも関わらず、銀行から責め立てられることになる。設備投資が満足にできず老朽化しても営業活動を怠ることはできない。ギリギリまで経費削減する中で従業員を励まし、顧客満足を高めていかなければならない。矢面に立たされる子の後ろ盾となることが、経営から退いた親の役割と言えるだろう。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 
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