【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 459】事業承継と親子関係2 青木康弘


 前回に引き続き、親子の性格や関係を例示しながら、事業承継を円滑に進めるコツを紹介しよう。親族内承継だから円滑な意思疎通が図れるかというとそうではない。血のつながった親子であるがゆえの葛藤が旅館・ホテルの運営にさまざまな影響をもたらすことがある。

 3、親はたたき上げ、子はエリート

 旅館・ホテルの経営者は子の教育に熱心だ。後継者としての素養を身に付けさせるために大学進学や海外留学させることは珍しくないが、親の意をくんだ形で承継するかというとそうではない。

 特に考え方の相違が出やすいのが、親が創業者や中興の祖といわれる実績を上げていて、子がエリート教育を受けている場合だ。

 このようなケースでは、子に部門責任者を任せることや別会社を作って経営を任せるなどの経験を積ませてから事業承継を行うことをお勧めする。

 エリート教育を受けていても、宿泊業の現場の実態やスタッフの特性などを理解しないと的確な経営判断をすることは難しい。また、古参の役員や経営幹部の人心掌握ができずに改革が表層的となりやすい。

 子がエリート教育を受けていても、子供のころに接客や布団の上げ下ろし、清掃などを手伝う経験をしていると、スムーズに承継できているケースが多い。勉学に差し障りあるからと学生のころから仕事を手伝わせることをためらう親がいるが、将来後継者として期待しているならば、遠慮なく巻き込むことをお勧めする。

 4、親は創業者直系、子の配偶者は養子

 旅館・ホテルの後継者として婿養子が指名されることは珍しくない。中には、海外駐在していたメーカーの社員から旅館の役員に転身するケースもある。

 このようなケースでは、旅館・ホテル業のあるべき姿について一方的に押し付けるのではなく、婿養子の性格や得意分野に合わせて役割を与えていくことが望ましい。

 婿養子となったことを機に歴史ある旅館に入社し、成長の礎を作った経営者も少なくない。

 後継者に指名されたからと気負いせず、配偶者や親族に過度な気遣いをすることなく、自然体で能力を発揮できる環境づくりを行おう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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