【観国之光 259】世界遺産 ブームに終わらせるな 本社論説委員 内井高弘


世界遺産に登録されて丸5年となった富岡製糸場。観光客が減少し、集客に向けた対策が課題となっている

 日本にまた、新たな世界遺産が誕生した。日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」(堺市)を含む「百舌鳥・古市古墳群」で、大阪府で初の世界遺産登録だ。

 国内の世界遺産登録としては23件目(文化遺産19件、自然遺産4件)で、これで7年連続の登録となった。天皇や皇族が葬られたとして宮内庁が管理する「陵墓」の登録は初めてというおまけつきだ。

 世界遺産登録のインパクトは大きく、しばらくは「世界遺産特需」でにぎわうだろう。登録に伴う堺市の経済波及効果は400億円に上るとの試算もある。

 ただ、構成資産である49基の古墳のうち、半数ほどが陵墓などで、宮内庁の管理下にある。参道や一般拝所を除き原則非公開だ。それでなくても古墳の全体像は見えにくい。

 仁徳天皇陵は墳丘の長さが486メートルもあり、地上からは小高い森にしか見えないという。立ち入り禁止区域も多いとあっては観光資源としてはやや弱さが否めない。セスナ機に乗って上空から古墳群を見渡す遊覧飛行ツアーなどもあるようだが、観光客の満足度をどう高めていくのか、自治体や観光業界の腕の見せどころといえる。

 前述のように、世界遺産は登録後に観光客が急増する。例えば、14年6月に世界遺産に登録された群馬県の富岡製糸場。登録前の13年度に約31万人だった来場者は、14年度、4倍以上の約133万人に激増した。しかし、その後は減少に転じ、18年度は約52万人とピーク時の半分以下となった。

 07年に登録された石見銀山(島根県大田市)は08年に80万人を超える集客があったものの、18年は25万人ほどと落ち込んでいる。

 1993年の第1号登録(法隆寺地域の仏教建造物)から四半世紀がたち、その数は23件にまで増えた。これらは世界に誇る日本の財産であることは間違いないが、当初ほどの熱気があるかというとそうでもないような気がする。

 一時期のブームに浮かれることなく、遺産の価値、魅力をどう伝えていくか、いかに人々に関心を持ってもらうかを考える必要があるのではないか。

 外務省によると、今年7月現在の世界遺産数は1121件。内訳は建造物や遺跡などの「文化遺産」が869件、自然地域などの「自然遺産」が213件、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」が39件となっている。

 イタリアと中国が登録数55件で1位となっており、これにスペイン(48件)、ドイツ(46件)、フランス(45件)が続く。日本は23件で12位につけている。


世界遺産に登録されて丸5年となった富岡製糸場。観光客が減少し、集客に向けた対策が課題となっている
     

 
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