竹内氏
4年前、本稿413回でパエリアについて述べた。スペインからわざわざ持ち帰った直径38センチものパエリア鍋を使いこなすべく、当時はパエリア道を究めたいと頑張っていたが、鍋底が焦げ付くようになってしまい、本場で「ソカラ(socarrat)」と呼ばれるお焦げとは違う!と諦めの境地に至り、パエリア作りからしばし遠のいていた。
だが先日、ふとプロのパエリアが食べたくなり、東京日本橋にあるパエリア専門店「ミゲルファニ」を訪ねてみた。関東に6店舗、大阪に1店舗を展開する同店は、パエリアの発祥地とされるスペイン・バレンシア州近郊スエカ市で開催されている「スエカ国際パエリアコンクール」で、2014.2024年と史上初2度の優勝を果たしたパコ・ロドリゲス・カバジェロ氏のプロデュースで、本場の味を楽しめると人気だ。
パエリアというと、エビやムール貝などシーフード系を想像してしまうが、伝統的なパエリア・バレンシアーナの具材は山の幸。古くからアラブ人によって稲作がもたらされた同地域の郷土料理ゆえ、鶏肉、ウサギ肉、エスカルゴや、インゲン豆など豆類といった地元食材を使用する。
壁一面にスペインから取り寄せたタイルを配したこだわりの店内で、世界一に輝いたバレンシア風パエリアが選択肢に入った、8種類からチョイスできるパエリアランチBセットを注文。他にサラダとハモンセラーノ、塩漬けタラとマッシュポテトをひと口サイズに丸めて揚げた塩ダラのクロケッタ、皮がパリッと焼かれた鶏肉のハーブプランチャ(鉄板焼き)と、食後の飲み物。
主役のパエリアは、2人前とはいえ40~50センチほどあろうかという大きなパエリアパンで提供される。そのサイズ感もスゴイが、国際コンクールを制しただけあって、サスガに美味♪
60年以上の歴史を持つ同コンクールは、厳しいことでも有名。全チーム同条件で戦うため、パエリア鍋や専用BBQ台などの機材や食材は、全て大会本部から支給された物以外使用禁止。薪(まき)をたく火を起こし、肉をさばくところからスタートし、2時間半の制限時間内に完成させなければならない。作成者を伏せた状態で審査され、味・見た目・色・米の食感・お焦げの5項目を評価される。
提供の際、「コチラが鶏肉で、コチラはウサギ肉です」と説明が。なるほど鶏は明らかに手羽中だが、少し小ぶりなウサギは、見た目だけでスグ判別できない。食べると違いが分かる。クセがなく、淡泊で上品な味わい。エスカルゴもプリッとした食感が楽しい。
お焦げをカリカリこそげていると、スタッフがいったん下げて鍋から削ぎ、お皿に盛り直してくれた。左手で鍋を抱え、右手で懸命にお焦げを削いでいたが、腕が疲れないかと心配になってしまう。でも、これくらいくっついていてもOKだと、炊き加減が分かった。これはやはり、今一度トライしてみるしかない。次回はおいしくできるといいな♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




