【竹内美樹の口福のおすそわけ 252】ラウンジにて 竹内美樹


 仕事柄出張が多い筆者。せっかくだから、航空会社のマイレージをためている。海外へのフライトも視野に入れるなら、日本航空か全日空かの選択肢になる。友人もいるし、系列ホテルをよく利用させていただいているから、筆者はJAL派だ。

 航空会社は頻繁な利用を促すため、優先予約や専用カウンターでのチェックインなど、魅力的な特典を用意している。だから「より上位のステータスがほしくてマイルをためる」という図式が生まれる。そのために、用もないのに飛行機に乗る人々のことを、「マイル修行僧」と呼ぶのをご存じだろうか? 何を隠そう、かつては筆者もその1人であった。やっとこれだけマイルがたまったんだから、あともうひと息。ならば、1泊で沖縄に行っちゃえ!というワケだ。

 そのご褒美として、空港内の専用ラウンジを使えるのがうれしい。これまで国内外で数多くのラウンジを利用したが、長居したくなるステキな空間や、レストランのごとくスタッフがオーダーを取りに来るダイニングなど、素晴らしいラウンジがある一方、仕方なくそこにいるようなガッカリな所もある。一概に航空会社によるともいえず、空港によっても違う。

 筆者がよく利用させていただいている、成田空港第2ターミナル本館3階JALファーストクラスラウンジは、ダイニングが充実している。人気ブランドのスープやパンをはじめ、JAL特製オリジナルビーフカレーの他、和洋中のお料理がブッフェ台にズラリと並ぶ。中でも1番人気なのが、目の前で握ってもらえる「にぎりずし」である。

 そこで顔なじみになったのが、すし職人田中光秀氏。たくさんのお客さまがみえる中、おいしいと言って下さる方のために頑張りたいと語る。かつてすし店を営んでいた経験から、ともすると雑な仕事になりがちなブッフェでも「お店より丁寧に」を心掛けているという。しかも「シャリ少な目だったね」と、好みまで覚えていて下さる。ホスピタリティも笑顔も最高!

 実は筆者、近頃JALの対応に少々疑問を感じていた。バンクーバー行きの便で、航路の半分以上進んでいたのに、急病人が出て引き返したことがある。成田に戻り、結局翌日の便で再出発ということになった。到着日の予定は全てキャンセル。中には大きな損害が出た乗客もいただろうに、何の説明もなく、大したおわびもなかった。舞い戻った筆者をねぎらってくれたのは、客室乗務員でもグランドスタッフでもなく、あの田中さんだった。

 経営破綻した頃は、もっと姿勢が違った。国内線でさえ、座席に着くと「竹内さま、いつもありがとうございます」と声を掛けてくれた。あの頃を思い出してほしい。苦しかった頃のことを、忘れてはいけない。…って、自分も戒めなくちゃねと、ラウンジでシャンパンを飲みながら考える。ちょっぴり苦言を呈したが、それはJALが、日本の誇りであってほしいから。やっぱり、JALを応援しようっと!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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