【竹内美樹の口福のおすそわけ 210】ラスベガス口福の旅 その1 ~6ポンドのロブスター 竹内美樹 


 大好きな街の一つ、ラスベガス。そこで必ず訪れる「ザ・パーム」に行って来た。このレストランのウリは、米国農務省お墨付きのプライム・ビーフを最低でも35日以上熟成させたステーキと、カナダ産ロブスター。お肉もいいけど、われわれはいつも、メニューに店のスペシャリテと明記されているロブスター狙いだ。

 サイズは3ポンドからで、当日は幸運にも6ポンドの物が入荷していたのでもちろんオーダー。1ポンド約453・6グラムだから6ポンドで2721・6グラム、つまり3キログラム近くあるということになる。

 このロブスター、「オマール海老」という表記も見かけるが、どう違うのか? 簡単に言うと、ロブスターは英語でオマールはフランス語だ。前者は通称「アメリカン・ロブスター」、後者は「ヨーロピアン・オマール」とも呼ばれる。同じ「十脚目・ザリガニ下目・アカザエビ科・ロブスター属」で、いずれも北大西洋の西と東に生息しているのだが、若干タイプが異なるようだ。前者の方が大ぶりで、後者はより味が良いとされ高値で取引される。

 ロブスターは、不老不死だという風説がある。「ナショナル・ジオグラフィック」の「動物大図鑑」で調べてみると、「記録に残る最大のロブスターは、カナダのノバスコシア州の沿岸で捕えられた、体重約20キロ、体長は0・9~1・2メートルであった。そのロブスターは少なくとも100歳であったと考えられている」と記載されている。

 同店も、そのノバスコシア産。その辺りはきっと大物が多いのだろう。登場した主役は、縦真っ二つに梨割にされ、お皿というよりお盆ともいうべき代物からはみ出んばかりに盛り付けられている。巨大なハサミは、大人の男性の顔を優に上回る大きさだった。

 侮るなかれ、大きいからといって大味ではない。身の旨味も甘味も強く、それでいて繊細な味わいで、しっとり軟らか。ハサミはぷるんぷるんかつジューシー。ミソも濃厚で超美味。実は、同店の調理法は他とは違う。通常は茹でたり蒸したりすることが多いが、ここでは焼いているので、こんがり焦げた部分が味のアクセントになり、香ばしい匂いも食欲をそそる。しかも信じられないほどリーズナブルで、懐にも優しいから、また行きたくなる。

 食べやすいようにハサミ部分を割ってくれたスタッフのブライアン曰く、1カ月前に連絡を入れれば、10ポンドクラスを用意できるとのこと。籠漁なので、籠に入ったまま海の中に入れておけば、餌も入って来るから痩せずに取って置けるそうだ。今まで見た中で一番大きかったのは、12ポンドもあったという。恐るべし、ロブスター!

 海老の仲間は脱皮するので、新しく生まれ変わるという意味と、腰が曲がるくらいまで長生きできるようにという願いを込め、縁起物としてお正月に召し上がった方も多いだろう。不老不死かどうかはともかく、長寿のロブスターにあやかり、年齢不詳を目指そうと年頭に誓った筆者である。

※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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