【私の視点 観光羅針盤 335】トキ消費から見る地域ガイド 吉田博詞


 「モノからコトへ、コトから~へ」という「コト消費」の次のトレンドキーワードとして「イミ消費」と共に注目されている「トキ消費」というスタイルがある。

 提唱している博報堂生活総合研究所によると「トキ消費」とは、その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費のことで「非再現性」「参加性」「貢献性」の三つの要素を併せ持つという。

 「非再現性」とは時間や場所が限定されていて、同じ体験が二度とできないこと。「参加性」とは不特定多数の人と体験や感動を分かち合うこと。「貢献性」とは盛り上がりに貢献していることを実感できることだという。

 徐々に回復してきている旅行需要を見据えた中で、観光業界においてもこの「トキ消費」的観点での滞在設計を行うことで、もっと大きな満足を得られるに違いないと考えている。既にウィズコロナは2年が経過して、旅のスタイルもこれまでの物見遊山的なものから、とっておきの滞在をしたいといった需要に大きく移行しつつある。

 地域の満足度を上げていくには、ガイドを中心とした地域の案内人が「トキ消費」的発想でいかに参加者を魅了できるかがポイントになってくるだろう。それぞれの観点からひも解いてみたい。

 (1)「非再現性」は、日々の旬なネタを織り込んでいくことだろう。今日は何の日?や、天気やオリジナルな偶発性をネタに考えていけるといいだろう。ガイド自身や地域のその時のコンディションをあえてネタにするのも方法だ。

 (2)「参加性」は、一番容易ですぐにでも実施できる事項だろう。参加者に名前や出身を聞きニックネームをつけて、ガイド自身もニックネームで呼んでもらう。クイズを出題する、手や体を動かす、名前を刻んだプレートを来訪記念とする、地域の方との交流を促すといった要素を織り込む手法になる。

 (3)「貢献性」は、参加することで地域のために役に立てると感じられ、誰かが喜ぶ姿をしっかりと見せる・感じることができるかどうかという観点が大事だ。

 これらの要素を普段からガイドを中心とした地域の接遇に意識的に織り込むことができれば、満足度を上げられることは間違いなく、特別な思い出をその町に刻むことができるだろう。

 今後、団体から個人客へのシフトがより鮮明になる中で、地域の接客・接遇におけるサービスレベルの向上は非常に大きなポイントである。今日のこのタイミングでしかできない、特別な思い出を持ち帰ってもらうために、ディスニーのキャストのように何を話すかではなく、どう巻き込むかを設計していけるといいだろう。

 単価アップが各所でテーマになる中で、もちろんホンモノ志向でいいものを提供することは大事だが、さらにガイドという人間の介在性で「トキ消費」的視点で三つの要素をしっかりと入れ込んでいければ、時代に合った滞在が出来上がるに違いない。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 

 
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