【私の視点 観光羅針盤 327】観光地の再生・観光サービスの高付加価値化 吉田博詞


 まん延防止期間が終わり、コロナ対策において目の前の対処としてGo Toトラベルの再開等も話題に上がり始めていることは観光業界において一つの明るい兆しだろう。賛否両論もあるが、冷え切ってしまった観光地において閑散期における稼働が少しでも改善されることで、回復基調が見えることを期待したいところだ。

 そんな観光業界において、今月公募が始まったものの中で着目したいのが、令和3年度経済対策関係予算として1千億円の予算が付いている「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化」事業である。同様の事業が令和2年度の3次補正でもついて、令和3年度にまたがりながら550億円の予算で展開されたものがパワーアップされることになる。

 実質令和4年度で展開できる予算であり、3月半ばから地域公募が開始となっている。1施設当たりハード投資として最大1億円、経営状況次第では補助率が通常の2分の1から3分の2までかさ上げされることを含めて、非常に大きな予算を活用できるがゆえに注目度も高い。この新事業は予算規模に注目がいきがちであるが、一番注目したいのは事前の伴走支援型の地域再生計画の立案である。

 昨今、観光行政においてDMOにおける戦略策定が浸透してきた中で、場当たり的なイベント展開からKGI/KPIに基づく事業実施がなされるようになってきたことは非常にいい流れが確立されつつある。ただ地域DMOが平成の大合併後の市町村単位で設立されることが多いがゆえに、温泉地やリゾート等において、狭域エリアにおける戦略策定においてはDMO内における各地域バランスの配慮等の必要性から手が回っていない課題があった。

 今回の事業は、事務局および専門家陣が、観光地の再生戦略を共に描く手伝いをしてくれ、戦略立案後に実行フェーズとしてハード整備に入っていくという画期的な立て付けになっている。昨今、温泉地等において、再生戦略を描きたくても、DMO等の計画と足並みをそろえられずに、特定のエリア限定戦略策定は手つかずのところが多かった。そこをしっかりと国費でサポートしてくれるということは非常にありがたい立て付けであることは間違いない。

 観光地の再生は待ったなしであるが、安易なばらばらとした個別改修だけが進むのではなく、特定のエリア全体で共通のビジョン・戦略が描かれ、ハードを起点としたソフトにも通じる再生戦略をもとに再生が進んでいくことを期待したい。

 私も紹介事業の前年度版にあたる高付加価値化事業におけるスペシャリスト派遣で七つのエリアをサポートしたが、本気で再生しようとしている経営者の姿勢に胸を打たれ、継続的に支援を差し上げている地域も多い。コロナからの立ち直りを未来投資として考えて地域全体の戦略策定と併せ、その推進母体が成熟していくことで、日本の潜在力がある観光地が再生されていく未来に期待したい。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 

 
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