【私の視点 観光羅針盤 325】DMO課題にDMC・RMO設立論を 吉田博詞


 全国でDMO推進がなされ、各地において観光の中長期ビジョンや連携が加速している。現状、うまくいっているDMOは数少なく、多くのDMOが課題を抱えているのが実情だ。どこのDMOも成果を求められる中での存在意義を問われ、組織存続のための財源獲得や人材育成等多岐にわたる課題に直面している。

 DMOが機能しきれていない要因をいくつか整理してみたい。まず、一つ目に現状のDMOがかつての3セクと同じような意思決定・責任者不在問題に直面していることが挙げられるだろう。行政との役割分担の不明瞭さ、自治体や旅行会社等からの出向者が2~3年で入れ替わるメンバーで構成されるが故に、腰を据えて取り組み続けることができていないことも理由だろう。

 二つ目に、DMOの存在意義を出すための補助金等予算獲得が目的化され、一定の事業は回してはいるが、地域事業者の求めることを展開しきれていない点も挙げられるだろう。

 三つ目にDMOにおいて広域・地域連携・地域の3カテゴリーがある中で、三つの役割分担が中途半端なままそれぞれが重複したり、ちぐはぐな事業を展開したりしている点も挙げられる。これらの機能不全は非常にもったいないことである。

 これら機能不全解決のために一つ着目していきたいのが、DMOとは別に地域経営の実動部隊としてのDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)やRMO(総務省や農水省の推奨する地域運営組織)や地域商社の設立だ。

 より狭域エリアにおける地域経営全般を担う立場として、組織に地域の経営者が参画し、自社の事業にも直結する形で地域経営に参画していけば、もっと自分事化した意思決定がなされ、経営責任をもった展開が可能となる。大事なのは当事者意識である。

 現状の地域DMOは、平成の大合併で統合された市町村単位が母体となることが多い。規模が大きいことを展開する際は機能をするが、合併前の市町村エリアや温泉街単位で機動力を持った展開をしようとなると、平等性等が邪魔をして動きが鈍くなることが多い。
 合併前の市町村単位で一枚岩になることは非常にハードルが高い。これからの観光地経営においては、顔が見える範囲・責任を持てる範囲での意思決定組織があると機動力を上げることができる。目安としては学校区くらいがちょうどいいと考える。

 DMOはこれらの学校区単位のDMCやRMO・地域商社が展開する地域経営をうまく調整・サポートしていく機能として役割を果たしていってくれれば、各地の再生はより良い形で進んでいくに違いない。以前もこのコーナーで伝えた株式会社DMC天童温泉はその代表格であり、各地でその動きが生まれている。

 地域の変革のために、DMOと温泉街や集落など、学校区単位の地域経営組織が再度立ち上がり、事業推進役となって動いていくことを期待したい。これらのマネジメント組織が地域再生の原動力になれば、日本の観光地の在り方が大きく変わっていくだろう。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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