【私の視点 観光羅針盤 309】レスポンシブル・ツーリズム 吉田博詞


 昨今、サステナブルツーリズムと併せて、観光領域を中心としてもう一つ大事なキーワードになってきているのが、レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)である。

 より旅行者もツーリズムを構成する要素だと捉えて、旅行者が意識や行動に責任を持つことで、よりよい観光地形成を行っていこうという考え方である。自身の行動が、地域や環境に負荷がかかってしまうかもしれないということをより認識した上で、責任ある参加をしていこうという価値観・旅のスタイルが、コロナの影響もあり加速している。

 先日、私自身も国立公園活用策拡大のモニターツアーに参加した際に、驚くべき反応があった。日本海の雄大な海を見渡す中で、参加していた日本人と欧米人のモニター参加者の感想がまったくもって違っていたことに驚いた。

 日本人参加者は「うわ~きれい!」と感動を言葉にしていた。欧米出身の参加者は「うわ~きたない!」という反応だった。前者は、水平線まで見渡せる開放感に感動して、その絶景に感動していた。かたや後者は、ビーチにたどり着いているゴミの散乱状況をみて、汚いと感じたようである。長く日本に住んでいるとビーチのゴミ等が日常化されており、当たり前で気づかないものになっているようで、人間の慣れが怖いものだと痛感した。

 この議論をした後に、モニター参加者と話をしたところ、このツアーの中で、一緒に海岸清掃をするビーチクリーン時間を入れようとしていることに対して、ぜひやるべきだということで意見が一致した。

 コロナ前はオーバーツーリズム等の課題もあがっていた中で、このレスポンシブル・ツーリズムの概念はより世界の主要観光地で積極的な導入が加速している。

 例えば、ハワイ州観光局では「Be a Pono Traveler」というキャッチフレーズを掲げている。このPono(ポノ)とはハワイの言葉で、善良性・親切心・真心・モラル・良質・適切・正義・優秀・健康で幸福な状態・本質といったたくさんのことを意味しており、一言でいうと「正しい状態」のことをさしている。

 旅行者にも、このポノの概念を理解して動けるかが期待されており、五つの行動が推奨されている。(1)海洋動物に出会っても、むやみに近づかない(2)有害成分の入った日焼け止めの使用禁止(3)森林を訪れるときは靴裏の泥を落とす(4)進入禁止エリアに侵入しない(5)エコバッグやマイボトル、マイストローなどを持参。こうした具体的なアクションを推奨することで相互の理解は進んでいるという。

 日本でも自然を活用した滞在が加速している中で、今のうちからこの概念を積極的に取り入れていくことができれば、結果的に地域の皆さんも、観光に対する協力も変わっていくだろう。旅行者が訪れることで、地域がよりよく改善されていくサイクルが加速していくことを期待していきたい。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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