【私の視点 観光羅針盤 250】MICEフューチャー・アクション 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三


 私は2006年4月に北大で観光学高等研究センターを創設し、初代センター長に就任した。友人知人がほとんどいない新天地で不安なスタートであったが、5月初めにNPO法人コンベンション札幌ネットワークの面々多数の来訪を受けた。用件は「国際観光コンベンションフォーラム」を開催したいので協力してほしいということだった。

 このNPOは04年に設立され、コンベンションによる地域活性化の創出を目的にしており、フォーラム開催によってコンベンションの重要性を社会的にアピールしたいとのこと。メンバーの表情が生き生きとしていたので、私は喜んで協力要請を承諾した。

 07年に札幌で第1回目の国際観光コンベンションフォーラムが開催され、09年にはこのNPOを中心にして「日本コンベンション研究会」が設立され、全国規模で会員が増えたことによって、ほぼ毎年フォーラムが日本各地で開催されるほどに発展している。

 この研究会はコロナ禍が生じて、MICE業界が冷え込む中で真っ先にZoomによる緊急会議「MICEフューチャーセッション」を提唱し、4月9日から毎週木曜夜に会議を開催している。毎回テーマを決めると共に、香港、韓国、シンガポール、オランダ、タイ、米国などに在住のゲストがオンラインで最新情報を伝え、MICEの今後の方向性についての議論が大いに盛り上がっている。

 7月24日には研究会の呼びかけで、MICEフューチャー・アクション「新たな日本のMICEショーケース」が全国一斉開催された。東京のメイン会場と全国の諸都市をつなぐ、リアルとオンラインのハイブリッド運営で開催された。今回は全国で14の地域・都市(沖縄、松山、岡山、堺、大阪、愛知、名古屋、富山、新潟、静岡県東部、東京、つくば、仙台、札幌)が参加した。

 メイン会場では、立命館アジア太平洋大学の出口治明学長による基調講演「新しい国際会議・MICEのあり方とは」、パネルディスカッション「今、インバウンド・MICEの戦略的重要性を考える」が行われ、続いて全国各地でエリアシンポジウムが開催された。今回のイベントでは、ウィズコロナにおけるMICE開催のガイドライン徹底化、新しいテクノロジーを活用したハイブリッド化、官によるMICE助成・支援などが検討されると共に、アフターコロナに向けてのMICEの価値や役割の再認識、地域社会との共存共栄の大切さなどが話し合われた。札幌ではイベントの一環として交流会が開催され、パークホテル中庭のオープンガーデンで「フードマイレージ20マイルへの挑戦」をテーマにして札幌市内のオーガニック食材を活用した料理が供され、サステイナブルな新しい交流スタイルの提案が行われた。

 コロナ禍が継続される中で、MICEの全面的な復活は容易ではないが、全国のMICE関係者が互いに情報交換し合い、ピンチをチャンスに変えていこうとするさまざまな努力の積み重ねは大いに評価できる。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒