【私の視点 観光羅針盤 131】オリンピックで深めよう日中韓の絆


 いよいよ、韓国で平昌オリンピック・パラリンピックが始まる。ますます危険度を増す北朝鮮情勢と韓国内の慰安婦を巡る議論の行方が心配だが、ここはオリンピックの原点に戻り、北朝鮮の参加も得て、名実ともに「平和の祭典」が実現されることを期待したい。

 併せて、15年の「日中韓観光交流新時代の幕開けにふさわしい新たな目標として3国間の人的交流規模を3千万人にする」という観光大臣会合での合意を踏まえ、双方向になっていない日韓の交流をバランスよく拡大するとともに、政治に翻弄(ほんろう)されがちな中韓の交流も安定させたい。

 日中韓のさまざまな交流が活発になれば、東アジアの平和が確固たるものになることは言うまでもない。幸い、平昌に続いて東京、北京と、東アジアでオリンピックが相次いで開催される。この絶好の機会に、日中韓の交流の絆を一層強固なものにしたい。

 その際、量的な拡大だけに目を向けるのではなく、政治情勢や為替などの経済情勢に左右されない奥深い交流を定着させる工夫が必要だ。その意味でも、冬季オリンピックでは札幌、長野の経験があるわが国が競技ノウハウや市場開発などソフトの支援などを通じてより深くコミットすることが肝要だ。

 そんな観点から、昨秋長野県は「日中国交正常化45周年記念 中国訪問団」を実施した。知事を先頭に60余人が、冬季オリンピック共同開催地の北京市と河北省などを訪れ、さまざまな階層や分野での交流を確認した。特に北京市とは、青少年の冬季スポーツ交流を始める覚書を結んだ。

 ちなみに、筆者の大学の助手の李ガン君によれば、中国では国民の冬季スポーツへの関心を高める必要があると、2025年までに「5千人が競技者として、3億人がレジャーとして氷雪スポーツに参加する」という発展目標を掲げているという。

 今後急成長が見込まれ中国市場も見据えて、長野県としてはオリンピック競技のノウハウの提供にとどまらず、スポーツ機材などの商品開発、スポーツ医療の普及などさまざまな協力関係を構築したい意向だ。また、競技者を招き、県内選手との合同練習を行うとともに、青少年のスキー教育旅行を誘致する計画だ。

 今回の訪中の窓口として尽力した長野県国際担当部長・大月良則さんは「平昌がある江原道と長野県、河北省の3地域が一体となって冬季スポーツブランドを発信したい。欧米で発展した文化を東アジアにおいても定着させることができれば、低迷している国内市場の活性化にもつながる」と、その意義を強調する。

 一衣帯水の近隣国、日中韓が相互理解に根差した奥深い交流を各界各層でしっかりと定着させることは、政治的に不安定な東アジアにおいて喫緊の課題だ。そのためにも、今回の長野県の訪問を具体的な行動に確実につなげていきたい。

 (大正大学地域構想研究所教授)

 
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