【焦点課題】JTB 代表取締役 社長執行役員  山北栄二郎氏に聞く


山北社長

新社長に聞く国内旅行販売の方針

Go Toトラベルで宿泊販売と地域振興を

 ――6月30日に就任。まずは社長執行役員としての抱負をうかがいたい。

 「JTBは、交流をしっかり創り出すという使命を持っている。われわれの強みの一つは社員の力、人の力だが、それを生かすにはデジタルが必須だ。社員の力をしっかりと引き出し、新しい旅行やイベントなどさまざまな新しい交流の形をニューノーマルの中でデジタルをうまく使いながら創っていきたい」

 ――旅行業界の現状をどうとらえている。

 「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う移動の自粛が全国的に解除された6月19日を境に、それまでたまっていた旅行へのエネルギーが放出され、ようやく国内旅行が少し動き始めている。取扱額としてはまだ前年の3割程度という状況だが、今後Go Toトラベルキャンペーンが始まることで夏場を中心に加速していくだろう」

 ――2020年度の旅行販売の方針は。

 「今年に限って言えば、国内旅行の販売に集中する考えだ。今、ファミリー層による近間、また滞在型リゾートへの旅行意欲が非常に強まっている。安全対策をきっちりと行ったうえで、そういうところから国内旅行需要の回復を進めていく。その中で単価の高い、付加価値の高い旅行商品の開発に取り組む。ロングステイやワーケーションへの対応も進める。ダイナミックパッケージなど自由度の高い旅行のスタイルや、地域に分散する企画をお客さまの利便性を高めながらオンラインと店舗の両面で提供する」

 ――Go Toトラベルキャンペーンを通じた取り組みのポイントは。

 「今回のキャンペーンを最大限に活用する。特に、支援額の3割が『地域共通クーポン』として配布されるので、単純に宿泊販売だけでなく、地域振興という点をしっかり踏まえ、地域にきっちりお金が残る仕組みを展開していく。当社のデスティネーションキャンペーンなどと連携しながらやっていきたい」

 ――旅行業界はネット対応が大きな課題だ。

 「われわれは今、ダイナミックパッケージを強力に推進している。今回のコロナをきっかけにデジタル化はさらに進む。今後の方針の根底にデジタル前提の考え方を置いて、引き続き強化を図る。お客さまに実感してもらえる価値を作るため、デジタルを活用してわれわれの持つ力をしっかり届けたい」

 「旅館・ホテルなど事業パートナーとの良好な関係づくりにおいてもデジタル化が必要だ。業務でもいまだにマニュアル作業がかなり多く、それがお互いの負担になっている。デジタル化をできる限り進め、その余力を使って、もっと深い商品開発やお客さまに対してのいろいろなサポートなどを実現していきたい」

 ――アゴダとの連携で「るるぶトラベル」を2月に刷新したが、システムトラブルが発生した。

 「一番の大きな問題は、ローンチした時に旅館など日本のマーケットの求める検索、操作性などに関するカスタマイズが不十分だったところ。コロナの期間に急速に改修を進めて、サイトとしての問題点はかなり解消している。テクノロジー面で優れているアゴダとの連携は、今まで以上にお客さまの要望に応えられるサイトにするのが目的。今後、必ず使い勝手の良いサイトになると確信している」

 ――一方、店舗のあり方をどうする。

 「お客さまとの接点ではデジタルの部分が大きくなっているためオンライン化をさらに加速する一方、リアルな接点が持てる店舗も非常に重要なので、その価値を高めるための変革をしていきたい。現在の店舗は、切符の販売から決済まで旅行販売の全ての機能を備えた重装備なものになっているので軽量化を図る。また、店舗は全国に分散しているので、人のノウハウも分散してしまうという難しい要素があり、ある程度集約した中でリモートとの組み合わせなども含め考えていく」

 ――JTB旅ホ連との関係をどう考えている。

 「今後も重要なパートナーだ。今、安全対策に関しても各宿泊施設から情報を寄せていただいているので、お客さまにその情報をきっちり提供し、安心して泊まっていただけるようにしたい。Go Toトラベルキャンペーンもうまく使いながら、きっちりと送客できる態勢を作る。情報の連携や付加価値の高い旅行の商品化、自由度の高い売り方などを通じてJTB旅ホ連の皆さまとの関係性を深めていきたい」

 「われわれもそうだが、観光産業はコロナで経営的に非常に苦しい思いをしている。熊本県など令和2年7月豪雨で大きな被害を受けたところもある。訪日インバウンドの回復にはしばらく時間を要するが、国内旅行の復活から一緒に協力しあっていきたい。観光産業はすそ野の広い産業だ。その観光産業を支えていけるよう販売に努力していく」

【聞き手・板津昌義】

 
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