【焦点課題】草津温泉観光協会 会長 市川薫氏に聞く


草津温泉の観光のかじ取り

女性目線で人づくりを 100選連続1位は譲らず

 ――草津温泉観光協会初の女性会長ですね。

 「昨年の暮れに会長就任の打診がありましたが、とても無理だと断っていました。しかし、皆さんからしっかりフォローするといわれお受けしました。正式には6月の総会で就任しました。責任の重さを感じています」

 「草津は観光で成り立っており、人口6500人の9割が観光で生計を立てています。観光は成長産業ですが、その時々の経済や国際情勢に左右されます。東日本大震災や本白根山の噴火では風評被害も出て、客足に大きな影響がありました。かじを取るのは大変ですが、観光業者だけでなく行政や商工会、飲食店などとも十分に話し合い、方向付けしていければ。最後は人と人のつながり。そこが崩れると運営に支障を来します」

 ――2019年度の重点事業は何ですか。

 「来年4~6月の『ぐんまデスティネーションキャンペーン(DC)』の成功です。200ほどのイベントを予定しており、今年のプレDCでやったものをブラッシュアップし本番に臨みます」

 「観光協会主催のイベントとして『夜景散策』や『湯畑大道芸』などを計画しています。湯畑のライティングやキャンドルイベントで夜の温泉街の楽しみが広がっています。にぎわいを創出することで町全体を活性化したいですね」

 ――草津の魅力を改めてうかがいたい。

 「いろいろな観光資源がありますが、私は『人』だと思います。立派な施設、いい温泉があっても、それを生かす人がいないと地域は輝きません。女性目線で人づくりをやっていきたいと思います」

 ――観光業界は人手不足といわれますが、草津も同じですか。

 「そうですね。旅館・ホテルは120軒、ペンション・民宿など合わせると170軒ほどありますが、総人口の3分の1が65歳以上で高齢化が進んでいます。働き手は外に求める必要があり、そのためには寮など住む場所を確保する必要があります。人材確保は個々の施設では限界があり、業界全体で取り組んでいかなければなりません」

 ――草津温泉観光協会DMOはどんな活動を。

 「30~40代の若手からなる三つの部会(グローバルマーケティング、新観光創生、人材育成)が活動の中心となっています。例えば、人材育成部会は雇用環境整備の研究やスキルアップ研修などさまざまな取り組みを行っています。その一つが草津温泉で働く人なら誰でも参加できる『草津塾』で、ここでは『品格を上げる姿勢と歩き方』などを実施しています。部会の機能をもっと充実させ、活動しやすいようバックアップしていきます」

 ――草津温泉はアクセスがいいとはいえません。

 「2次交通の悪さは確かにネックですね。長野・志賀高原と草津温泉を結ぶ292号(志賀草津高原ルート)は火山活動でしばしば通行止めになり、入り込みに大きな影響を与えます。292号とは別の新しい道路があればいいのですが、整備は簡単ではありません。これといった解決策はないのが実情です。草津白根山系が噴火しないよう祈るしかありません(笑い)」

 ――もう噴火の影響はありませんか。

 「全くありません。1~3月の入り込みは過去最高を記録し、にぎわいを取り戻しています。特に、若いお客さまが増えているのが特徴で、草津で温泉デビューする方もいらっしゃいます。何年か後にはお子さまを連れて来てくれるので、いい循環だと思います」

 ――年間観光客数は300万人ぐらいですか。

 「今年は320万人になりそうです。うち、宿泊客は200万人ほどです」

 ――草津温泉の最近の話題は時間湯問題ですね。100年以上の伝統がありますが、8月1日からは時間湯の無料化が始まり、48度とされてきた湯の温度も引き下げられ、湯長制度も実質的に廃止されました。

 「問題の根底にあるのは、時間湯の管理がきちんとなされていなかったということです。収支が不明朗で、湯長が私物化していたことが分かりました。膿を出して再出発する、と理解しています。管理すべき町にも責任があり、町長も給料を15%カットしたと聞いています。時間湯は形が変わりましたが、また文化を作り上げていけばいいのではないでしょうか」

 ――「にっぽんの温泉100選」で16年連続第1位となっています。もう十分ではないですか。

 「とんでもない。連続1位は町の誇りです。譲るわけにはいきません(笑い)。観光まちづくりに磨きをかけ、皆さんに支持されるようがんばります」

【内井高弘】

 
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