【焦点課題】日本音楽著作権協会 常任理事  須子真奈美 氏に聞く


須子常務

JASRACの現状

コロナ禍を乗り越えて旅と音楽の楽しさ提供

この6月の総会で、日本音楽著作権協会(JASRAC)の常任理事に就任した須子真奈美氏に、その抱負や、JASRACの現状などを聞いた。

 ――常任理事就任にあたっての抱負を。

 「大学時代の講義で著作権法を知ったことがJASRACに入社したきっかけだった。著作権は人間の思想や感情を創作的に表現した創作物に認められている権利で、プロ、アマ、大人、子供など職業や年齢に関係なく、作ったときから何の手続きも必要なく認められている権利であることを知った。現在JASRACでは60年前に公募で選ばれた『人に人権、音楽に著作権』という標語をあらためて使用し、著作権制度への理解を呼びかけている。著作権を大切にする心は、人同士が互いに尊重し合うことだと思っている。子供の時代からそういった気持ちを育んでもらえるよう、著作権制度の持つ意義が広く理解される取り組みを進めたい」

 ――業務内容の詳細を。

 「国際と資料を担当している。『資料』は一般の方にはなじみのない分野かと思うが、JASRACが利用者から支払われた使用料を分配する際の元となる国内外の楽曲の権利関係の情報を整備している。正確な分配を確保するため、作詞・作曲家などの権利者と日々直接向き合っている」

 「『国際』は海外の著作権管理団体との契約の締結や運用が主な業務だ。現在、96カ国・4地域にある125団体と契約を締結し、各団体との間で、委託された楽曲をお互いに管理している。コロナ禍で海外出張が難しいためオンラインでの会議を通じて有効な管理施策の検討を行っている。現地での情報交換が当たり前と思っていたが、オンラインでできるようになったことは進んだ点といえる」

 「JASRAC入社直後は数年広報部に在籍し、その後、録音部、システム部などに配属された。録音部では、音楽を複製する法人・個人にライセンスを出しており、CDのプレスの前に許諾手続きを済ませようとする誠実な方々と接することができた。一方で、海賊版などの不正商品を摘発に向けて全国の警察に相談したり、また、不正商品の輸入を水際で防止するために税関とのやり取りに奔走した。当時、このような刑事事件や税関と向き合う仕事は男性が行うもの、という雰囲気があったが、実際にやってみると女性ゆえのハードルは感じなかった。大変な業務だったが、今となってはよい経験になったといえる」

 ――女性活躍推進担当も兼務されている。

 「JASRACでは多くの女性が働いている。男女別の平均勤務年数もほぼ同じ。ただ、管理職に占める女性の比率は20%未満。性別に関係なく活躍できる職場にしていきたい」

 ――コロナ禍の中、JASRACの現状は。

 「コンサートの中止をはじめ、旅館・ホテルや飲食店、カラオケ店などの営業自粛などの影響がある一方、ネット配信分野は好調だった。委託者への使用料分配の日程を前倒しするなどの取り組みを進めている」

「緊急事態宣言のときは多くの利用者から休業の電話を頂戴したが、その後Go Toトラベルなどもあり、少しずつ上向いている印象だ」

 ――好きな温泉地は。

 「温泉は大好きで、長い休暇が取れるときは、足しげく通っている。お気に入りは由布院。泉質は柔らかいし、そこで出会う人すべてが親切にしてくれる。お気に入りは某有名旅館だが、とにかくホスピタリティが素晴らしい。以前、宿泊をしたときに、嫌いな食べ物はありますか、と聞かれたことがあった。実は生の玉ねぎが苦手だったが言えなかった。そのときの食事のサラダに生の玉ねぎが入っていたのでよけていたら、次の日のサラダに生の玉ねぎが入っていなかった。スタッフの方に聞いたところ、『勝手に外してしまいましたが良かったですか』と言われて感動した」

 ――観光業界にメッセージを。

 「コロナ禍以降、観光業界の皆さまは本当にご苦労をされている。人の集まりが少なくなっていることも問題だ。地域の景色や、旅館のおもてなしの心や癒やしは、勇気を与えてくれる。このコロナを乗り切って、旅と音楽を楽しめるようになればと、心から願っている」

須子 真奈美氏(すこ・まなみ)管理本部システム部部長、管理本部副本部長などを経て2020年6月から現職。

【聞き手・西巻憲司】

 
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