【焦点課題】ゆこゆこホールディングス代表取締役副社長 吉田周平氏に聞く


吉田周平副社長

ゆこゆこの取り組み

「平日シニア」から「温泉」へ 5年後に登録8千軒目標

 ――副社長に就任後、約10カ月たったが。

 「昨年6月末に就任した。これまでは主にカタログ通販型の宿泊予約サービス『ゆこゆこ』を展開してきたが、新たな国内外OTAの台頭など外的環境が激しく変化し、難しい局面にある。シニアを対象にカタログ通販で成功を収めてから10数年たち、ここから大きくビジネスモデルを転換することは容易でない。しかし、デジタル環境や旅行者ニーズに合わせて、変わらなければならない時が今だ」

 ――ミッションは。

 「過去の成功体験を捨てて冷静になり、環境が変化する中で求められているサービスを提供することだ。社員は、担当エリアの宿泊施設だけを見るのではなく、旅行者のニーズ、地域の変化、課題、方向性など広い視野を持ちながら動き、判断しなければならない。私は地域やお客さまはもちろん、業界全体に目を配り動ける人を育て、導いていかなければならない」

 ――現在の取り組みは。

 「ウェブと紙のハイブリッドな形での使い分けを進めている。紙は、カタログの役割を担うだけでなく、新たに読み物としての役割、価値を持たせた。旅のストーリーを紹介する冊子『旅本』を昨年から発行し、宿泊施設は観光や食など地域を巡る中で紹介している。紙は『パラパラ感』に良さがある。明確な意思を持って検索するウェブと異なり、目的があいまいな場合には紙で目を通し、情報収集の入り口を見つける人はまだ多い。一方、カタログはより詳細な情報を伝えるウェブへとシフトしている。営業面では、広告事業に幅を持たせ、宿泊プランと広告主のマッチングを新たに進めている。旅行の中に嗜好品や寝具、介護用品などを、自然な形で価値体験できるプランを組み込むことで、お客さま、宿泊施設、広告主の全員にメリットがあるようにしていきたい」

 ――組織の目標は。

 「温泉にフォーカスし始めて約1年。メインテーマを『平日シニア』から『温泉』へとシフトした。旅の満足度は、個々に異なる旅行者の期待値に応えられたかで決まる。当社では期待値マッチングの精度の向上を目標として掲げている。宿泊施設が全ての点で満点を取ることは難しい。旅行者のペルソナを明確にし、旅のストーリーの中で温泉、食、サービス、施設をうまく魅せていきたい。『ゆこゆこの旅は期待を外さない』と言われるようにしたい」

 ――現在の立ち位置は。

 エージェントとOTAの中間にいる。旅行のシーンは100、200もあるものではなく、セグメントは『温泉』に限るが、高級志向に走るなど偏ったことはしない。IоTやAIなど先端テクノロジーの活用は、適切な時期が来た際に取り入れていく。これまで紙、コールセンター、営業というアナログを強みとしてきた。ここにデジタル技術を加え、アナログとデジタルの両方を駆使する第三の勢力として躍進していく」

 ――温泉地の課題は。

 「自分たちが既に持つ観光素材の魅力を発揮できていない。山、海、湯けむりなど、日常と感じているものは、県外、海外の人から見れば魅力的なコンテンツだ。さらに、地元の人が語ることで大きな価値へとなる。地域の人が連携して取り組むことも大事だ。また、旅行形態の変化への対応も必要。団体、湯治の旅行の2大スタイルから個人、短期滞在へと変わった。外的環境の変化には、若者や外部の人などの新たな考えも取り入れたい。弊社は、社員のほぼ全員が温泉ソムリエの資格を保有している。オウンドメディアや社員の知識を生かし、地域の活性化を支援していきたい」

 ――地方創生における取り組みは。

 「別府の鉄輪温泉にサテライトオフィスを設ける。シェアオフィスの機能を持たせ、地域の人や旅行者が仕事や交流ができる環境を作り、当社が入り込むことで、温泉地に面でアプローチしたい。将来的には法人からのニーズに応え、研修やワーケーションに対応する施設として進化させる。地方にサテライトオフィスを求める声は多い。実績を積み、今後取り組みを拡散できればと考えている」

 ――今後については。

 「まずは、コンテンツの量産とクイックな発信だ。昨年からスタートした温泉旅行メディア『YUKO TABI』での記事を増やす。目標は、全温泉地だ。ウェブへの評価基準はSEOではない。滞在時間と占有率を重視し、記事の作成、発信を進めている。記事のリンクから成立した予約数は、当初の3倍に増え、公式予約ホームページ『ゆこゆこネット』からの予約よりも圧倒的に多くなった。旅のストーリーによる商品紹介を他社との差別化要素として最大限生かしていく。また、SNSを生かした情報拡散につながる仕掛けも増やしていきたい。数値的な目標としては、現在約3千軒ある登録宿泊施設数を2年後に6千軒、5年後はシティホテル、ビジネスホテルも増やして8千軒へと増やす目標を掲げている。3月28日に開いた取締役会で、6月27日の株主総会後、社長に就任することが内定した。社員と共に温泉地を盛り上げていく」

よしだ・しゅうへい=1997年学習院大学卒業。日本オラクル、日本マイクロソフトを経て、2008年旭シンクロテック取締役経営企画部長、12年代表取締役社長を歴任。18年7月から現職。 【長木利通】

 

 
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