【旅館ホテルのおもてなし 30】お体の不自由なお客さまへ2 大谷 晃


 では、どの高齢者、身障者にも喜んでもらえる旅館ホテルであることを目指し、何をすればいいのか、具体的に見ていきましょう。

 ●ご予約

 旅館ホテルはお客さまのご予約から始まります。この段階で確認するべきことは多くあります。きちんとした回答をしなかったために、お見えになってから、「こんなところとは聞いてなかった」と不快に思われたり、中にはクレームにつながったりします。

 高齢者や身障者のお客さまは旅行での不安感を取り除いてもらいたく、できること、できないことをきちんと答えてもらいたいのです。聞かれたことへはもちろん、気づいたことも、この段階で先回りしてお話ししておくことが大切です。

 その際、自館ができる施設・設備、サポート態勢を記したリストが役立ちます。それを見ながらだと対応も効率よく進みます。

 例えば、高齢のお客さまの場合、寝具の欄に、「布団」「ベッド」「その他」とあれば、ご希望にチェックを入れます。きっとベッドがいいだろうとか、布団がいいだろうと勝手に思い込まないことです。必ず、お聞きします。あるいは、食事内容の欄に、「減塩」「低カロリー」「油っこくない物」「柔らかい物」「細かく切った物」「その他」と書き分けておけば、ご希望を伺いチェックを入れることができます。これだけのことで、お客さまが口にできる料理をスムーズに調理場と共有できます。

 近年、ご予約は個人の場合、電話、メール、ファクス、ウェブサイトからと、その方法も多彩です。中でも多くの方が、まずウェブサイトでご自分の希望に合った旅館ホテルを探し、その中から条件に合うところを選ばれます。こうして一般には、ウェブサイトから直接予約したりしますが、高齢者や身障者のお客さまはそれだけでは情報が完全でなく不安なために、多くの場合、電話で確かめます。この際、ご本人なのか、同行者なのかをまず、確認します。その上で、滞在中どのようなご希望をお持ちなのか伺います。ただし、くれぐれも失礼のない話し方をすることが大切です。「ご滞在中にお手伝いできることはございませんか」「お体のことで、お伺いしておいたほうが良いことはございますか?」というようにです。

 また、旅館ホテルで、できないこともはっきりお伝えします。

 「……につきましては、私どもではご提供できないのです。大変申し訳ございません」というようにです。

 サポートを必要としているお客さまは、むしろそのようにきちんと言ってもらいたいのです。もちろん、失礼のないように伝えることが条件です。

 電話口では時に、お客さまが聞き忘れることもあります。あとから「あれを聞いておくべきだった」というようなことです。そこで、お客さまとの会話中、もしかするとこのことをお知りになりたいのでは、あるいは知っておかれたほうが良いのではと察したら、さりげなくその情報を伝えます。聞かれたことだけに答えるのではなく、「やさしい想像力」を生かし、このことでお客さまに満足いただけるおもてなしにつなげましょう。

   *    *

 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。
       

 
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