前回は、能登地震の被害から完全復興を目指す和倉温泉の今の姿をつづりました。
2泊3日の滞在中に跡見学園女子大学「観光温泉学(温泉と保養)」の授業で生配信したことを書きます。
私の授業では、毎年、温泉地や宿からの生配信にも重きを置いています。
きっかけはコロナのまん延でした。2020年と2021年はオールオンライン授業となり、学生がふびんに思えたのです。
よって、2021年に福島の土湯温泉から配信授業をしたことを皮切りに、その後も別府温泉「野上本館」と「竹瓦温泉」から、草津温泉から、神奈川県箱根強羅温泉「円かの杜」からと実施してきました。
生配信の授業の意図は二つあります。
まず、温泉を保持管理するのは宿の人である場合が多く、その立場でリアルな温泉の話をしてもらうこと。
もうひとつは、温泉旅館で宿泊する経験が少ない学生にも、宿の魅力とそこで働く意義を感じてほしいからです。
今年度の配信に和倉温泉を選んだのは、自然災害からの復興の過程を感じ、学んでほしいという目的です。
授業は和倉温泉の源泉管理をする和倉温泉合資会社の会議室からスタートし、小泉孝史社長から話をしていただきました。
小泉社長は、会議室に展示してある江戸時代のころの絵図をもとに、開湯1200年の歩みと合資会社の仕組みと課題を伝え、また江戸時代までは加賀藩に湯銭を払っていたが、廃藩置県により地元の人たちが源泉の権利を買い戻したこと、そして現在も民間による湯株制度で、外部の人は土地は購入できても、源泉の権利はそう簡単には持てないことなどを丁寧に説明してくださいました。
今年度の授業は、2030年の「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を鑑み、日本独自の文化を守ることの考察が大きな柱です。ですから和倉独自の源泉管理のお話からは、学生のみならず、私も大きなヒントをいただきました。
その後、工事中の現場を歩き、護岸工事の様子も映しながら、復興ツアーの実施と参加者の詳細を伝えました。
最後は「美湾荘」の貸し切り風呂とラウンジから。
「美湾荘」のスタッフが、地震当日とお客さまの避難の様子、今日に至るまでの過程を心情を踏まえてお話しくださり、「来てもらえることが本当にうれしい」と訴えてくれました。
学生からはこんな感想が寄せられました。
「実際に震災後の現場を知ることができて、とても勉強になった。リアルタイムで街を歩き様子を配信する講義は初めてで、とても新鮮で興味深く、前のめりになって聞いてしまいました」
「テレビで被災地の様子を見て、私にも何かできないか考えていました。しかし、どうせ自分にはできることがないと思い、何もしませんでした。しかし、今回の講義を通じて復興ツアーに参加したり、その地域を実際に訪れたりすることも、支援につながると知り、ぜひ行ってみたいという気持ちになりました」
例年通り、学生からは高評価でしたが、私ひとりで映像を見せ、音も拾いながら授業をするライブ配信ですので、非常に難儀な部分もあります。実際、今年も一度、ネットが切れてしまいました。
私は、観光においては、現場で感じ取る力が最も必要だと思っています。ですから、今後もそうした細かいトラブルは気にせずに、現場のリアルが感じられる授業をしたいと考えています。
(温泉エッセイスト)




