【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営タテヨコナナメ】モチベーション1 リョケン代表取締役社長 佐野洋一


 人の問題を考えていくに当たり、手始めにモチベーション(動機付け)というものから入っていきたい。

 モチベーションのもともとの意味は「自発性」「積極性」といったことである。つまり自発的、積極的にやろうとする意思を持たせることがモチベーション形成だと言ってよい。

 この分野の古典的な研究に、フレデリック・ハーズバーグの「動機付け・衛生理論」というものがある。職務満足に関係する要因を「満足要因」と「不満足要因」に分けて捉えたものだ。

 「不満足要因」とは、満たされているからといって意欲には直接結び付かないが、満たされていないと不満足をもたらすようなものである。給与、職務環境、福利厚生といった、どちらかというと即物的なものが該当する。また会社の方針と管理、職場の人間関係などもこれに含まれる。これらは「衛生要因」と名付けられている。

 一方「満足要因」とは、なくても不満足ではないが、満たされていれば積極的な「やる気」に結び付くようなものであり、「動機付け要因」と位置付けられた。内容としては、達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長といったものが挙げられている。モチベーションは、主にこうしたものに関係するということになる。

 この理論に対してはさまざまな批判もあるが、おおむね現代でも通用する考え方と言ってよいと思う。

 さて、「動機付け要因」が上記のようなものだとすれば、モチベーション形成のために具体的にどういうことをやっていくべきか? 筆者なりに落とし込んでみた。次の四つである。

 (1)やりがいのある仕事や役割を与える
 (2)達成感を味わわせる
 (3)褒める、認める、位置付ける
 (4)成長を実感させる
 さらに、この理論では「動機付け要因」として挙がっていないが、これに、
 (5)チーム活動
 …を加えたい。

 (1)やりがいのある仕事や役割を与える

 「やりがいのある仕事・役割」とはどんなものか? これには「誰かのお役に立つ」という側面と、「チャレンジングである」という側面があると考える。前者は「意義」―これが欠ければ目的を見失ってつまらない。後者は「充実感」―これがなければ当たり前すぎて倦怠(けんたい)感に陥る。旅館の接客係などが、ようやく一人前のことができるようになったところで、仕事に興味を感じられず辞めてしまうのは、これに起因する場合が多いのではないか。

 一定の能力レベルに達した人材には、日常的な業務だけでなく、経験や能力に応じて「次なるテーマ」を与えることを意識されたい。例えば委員会活動など、何らかのプロジェクトを任せてはいかがだろうか。あるいは人的能力レベルの底上げのため、社内講師を務めてもらうのもよい。そしてもう一つは、「人を育てる役割」を担ってもらうことである。いずれの場合も肝心なのは、ミッション(使命)を明らかにすることだ。「当社(当館)にはこういう課題がある。だからこういうことをしていきたい。ついては『あなた』にこういう役割を担ってもらいたい」という「意図と期待」をしっかり伝えることである。

(株式会社リョケン代表取締役社長)

 
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