【新春インタビュー】全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会 多田計介会長に聞く


多田会長

安心・安全の取り組みに磨きを 情報伝達の改革、今年を元年に

 ――20年の総括を。

 年初は海外の出来事と思っていた新型コロナウイルス。国内でこれだけ広がるとは思わなかったし、誰も思っていなかったのではないか。私の旅館も営業の火を消さないようにと努力をしてきたが、2月以降、インバウンドがぱたりと止まり、3月、4月は大赤字。緊急事態宣言もあり、断腸の思いで5月は休館という決断をした。

 私がこの業界に入って39年。能登沖地震も経験したが、これほどの経験をしたのは初めてだ。

 全旅連は組合員の資金繰り、融資制度の問題で奔走した。国会議員や行政に陳情し、さまざまな制度を決めていただいた。

 特に印象的だったのは、観光業界挙げての要望。宿泊4団体が一緒になり、これまでにないほどの活動を行った。協調して取り組むことが大事だと強く実感した。

 無利子無担保の融資制度や雇用調整助成金の特例措置を勝ち取ることができた。さらに全旅連ではわれわれの足かせとなっている税制の問題に着目し、固定資産税の減免も勝ち取れた。

 Go Toが始まる前に各県が行った域内キャンペーン。山形県の佐藤さん(山形県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長)が理事長として県に交渉して、まず実現した。それが各県に伝播していった。行政の中では「山形モデル」ともいわれている。私の地元の石川県も、知事が前向きに取り組んだ。春先のマイナスは取り戻せないが、域内キャンペーンからGo Toへ、うまく橋渡しができた。

 Go Toはいろいろいわれているが、今は経済を動かす唯一の材料だ。しかし、制度がいったん切れる1月の後、2月の予約が悪かった。業界は事態が収束するまで延長するよう要望したが、年の中頃までの延長となった。

 人が動くことで経済効果を生む。地方の経済を活性化させる。さまざまな産業がある中で、観光は社会に及ぼすリスクがほとんどない。いいことずくめだ。人が動くことによる感染リスクがいわれているが、Go Toで感染した人の数は限られている。Go Toで感染が広がったというエビデンスはないと専門家も言っている。

 われわれ1万5千の組合員旅館・ホテルは、1軒1軒がさらなる努力をして、個性あるおもてなしと、安心・安全に磨きをかける。こうして利用者から支持されることが大事だ。

 

 ――開催が危ぶまれた山口県での全国大会は、ユーチューブでのライブ配信という新たな形で9月24日に開催された。

 山口県の組合が一生懸命誘致した大会。必ずやるのだという現地の強い意思を受けて、何とか開催にこぎ着けた。苦労の末、ライブ配信という形になったが、多くの組合員や関係者に視聴していただいた。

 

 ――大会での多田会長のあいさつ。組合員旅館・ホテルとさらなる意思の疎通が必要と話をされていた。

 組合員とのコミュニケーションについては、われわれの伝達する力とスピードが、もはや時代に合っていないと感じる。ITの活用も含めて、改革しなければならない。今年はそれを考える元年と捉えている。21年度から3期目の会長を仰せつかるようになれば、若い方々の起用も含めて、考えていく。

 全旅連で決まったことが、隣の旅館に聞いても県の旅館組合に聞いても分からない。これではいけない。

 全旅連は全国に1万5千の組合員がいる。ほかの団体に比べて圧倒的に多い。裾野の広さはわれわれの大きな武器だ。地方同士のエネルギー、そして地方と中央のエネルギー。融合することでわれわれの存在価値はさらに高まる。

 

 ――全旅連にウィズコロナ調査研究会が設置されたが、活動状況は。

 われわれは不特定多数の人々を受け入れるだけに、絶えず緊張感をもって営業をしなければならない。そのあたりの衛生に関する知識と、経営を持続するに当たっての金融面などを研究し、組合員の皆さまと情報を共有するものだ。金融面については相談窓口のようなものを作りたいと考えている。

 

 ――厳しい状況が続く宿泊業界。組合員旅館・ホテルにメッセージを。

 Go Toを4千万人以上が利用したというが、そのうち200人程度しか感染者が出ていない。これだけの数字をキープしているのは組合員旅館・ホテルの努力のたまものだ。

 今年は延期された東京オリンピック・パラリンピックも開催されるだろう。日本が再び世界の注目を浴びることは間違いない。世界でも固有の文化である日本ならではの宿泊業、おもてなしを世界に発信するチャンスだ。苦しい中でもやれることはしっかりとやりたい。

 厳しい状況が続いているが、めげることはない。何があってもわが宿を守るのだという、気概を持ってほしい。

 粘り強く、胸を張って、お互い頑張りましょう。

多田会長

拡大

 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒